労働基準法

【2021法改正】36協定など労使協定への押印廃止・押印不要について解説

今回の法改正は、令和2(2020)年7月17日に閣議決定された「規制改革実施計画」のデジタルガバメント分野において、行政手続における書面への押印の抜本的見直しが明記されたことに基づき、労働基準法などが使用者に届出を義務付けている労使協定などについて、使用者・労働者の押印または署名を求めないこととするものです。

これにより、労働基準監督署への届出様式として定められている約40種類の書面について、押印欄を削除するなどの改正が行われます。

今回は、現時点で公表されている情報に基づき、厚生労働省労働基準局の2020年12月付「労働基準法施行規則等の一部を改正する省令に関するQ&A(以下、「Q&A」といいます)」を参考にしながら解説します。

改正の施行日

改正される法律(省令)は、主に労働基準法の施行規則です。

改正の施行日は、令和3(2021)年4月1日です。

なお、施行日の前であっても、公布日(2020年12月22日)以降は、新様式(押印欄のない様式)による届出をすることも認められます。

労使協定の様式変更について

押印が廃止される労使協定の種類

改正により押印が廃止される労使協定は、約40種類あります。

例えば、次の労使協定の様式が変更されます。

【押印が廃止される労使協定(例)】

  • 1ヵ月単位の変形労働時間制に関する協定届(様式第3号の2)
  • 1年単位の変形労働時間制に関する協定届(様式第4号)
  • 時間外労働・休日労働に関する協定届(様式第9号)
  • 事業場外労働に関する協定届(様式第12号)
  • 専門業務型裁量労働制に関する協定届(様式第13号)

チェックボックス欄の新設とチェック義務

今回の改正により、次の2つの内容のチェックボックスが新たに設けられました。

【様式のチェックボックス】

  1. 様式に記載のある労働組合が、事業場の全ての労働者の過半数で組織する労働組合であるか、または、労働者の過半数を代表する者が事業場の全ての労働者の過半数を代表する者であるか
  2. 過半数代表者と締結した場合に、当該過半数代表者が管理監督者ではなく、かつ選出方法が適正であるか

協定当事者が過半数労働組合である場合

この場合には、①のチェックボックスにのみチェックをすれば、要件に適合する届出となります(Q&A1-6)。

協定当事者が過半数代表者である場合

この場合には、①と②の両方のチェックボックスにチェックをする必要があり、両方にチェックがない場合には要件に適合する届出にはなりません(Q&A1-6)。

チェックボックスにチェックを入れたとしても、届出の様式として、形式的に問題ない(受理される)だけであって、例えば従業員の代表者が法的に適格性を有するかなど、法的に問題がないということの証明にはなり得ません。

なお、過半数代表者の適格性や選任方法については、次の記事で詳細に解説しています。

【36協定】従業員(労働者)過半数代表者の選出方法と手続について36(さぶろく)協定は、原則として、従業員が残業(正確には、「時間外労働」といいます)をする場合に、事前に締結しなければならない書面です...

ご参考に、36協定届の新様式は次のとおりです。

36協定届の様式の押印廃止について

36(さぶろく)協定は、時間外労働や休日労働の内容について、労使で協定するものです。

改正前における36協定の締結の手順は、次のとおりです。

【36協定の締結の流れ】

  1. 会社と過半数代表者との間で、時間外労働・休日労働に関する協定内容について合意し、「協定書」などにより協定を締結する
  2. ①で締結した協定書の内容を、「36協定届(様式第9号)」に記入する。
  3. 36協定届に、会社代表者と過半数代表者の署名または記名押印をする。
  4. 36協定届を労働基準監督署に提出する。

上記のうち③について、改正により押印または署名が不要となります。

協定書の作成について(①)

①の協定については、労使の合意内容をもとに協定書などを作成して、当該協定書に署名または押印することによって労使で協定を締結します。

この点、①の協定は、協定書を作成することなく、合意内容について②の36協定届への署名または記名押印によって締結をすることが認められています

なぜなら、②の36協定届には、時間外労働の時間数など、協定事項を記入する欄が設けられているため、36協定届への記入および署名または記名押印をすることによって、①の協定を兼ねることができるためです。

したがって、理論上は①と②は別のものであり、「協定書≠36協定届」であるといえますが、実務上は、両者の記載内容が共通していることから、「協定書=36協定届」として、36協定届への署名または押印をもって、両者を兼ねることとする取り扱いが行われています

また、この点について、労働基準監督署の通達においても、次のように示しています。

様式第九号(注:36協定届のこと)に労働者代表の押印等を加えることにより、これを36協定の協定書とすることは差し支えなく、これを届け出ることも差し支えないが、この場合には、当該協定書の写しを当該事業場に保存しておく必要があること。

一方、①の協定を行う場合には、会社と過半数代表者が協定内容について合意したことを証するために、慣行的に協定書に互いが署名または記名押印することが一般的といえます。

実務上は、①の「協定書」と、②の「36協定届」を分けて行うケースは少数派であり、手続を簡便にするために、②の「36協定届」しか作成していない方が多数派といえると考えます。

そして、この点については、労使の慣行によって行われるものであり、届出とは無関係のものであることから、法改正の影響を受けることはありません。

したがって、①の協定書について、署名または押印が不要になる改正ではないことに留意が必要です(Q&A1-5)。

つまり、改正による押印の廃止は、あくまで労働基準監督署に提出する「36協定届」の様式についてであって、(その前提となる)協定書を締結する際に行う労使の押印または署名については、従来どおりの取り扱いによる必要があります。

そこで、今後の実務上の運用においては、改正前のように「36協定届で協定書を兼ねる」場合には、様式の押印欄の廃止に関わらず、引き続き36協定届に労使の押印または署名をする必要があると考えます

この点については、まだ行政から指針が示されていませんので、改正への対応において今後の動向に留意しなければならない点といえるでしょう。

ご参考に、改正内容を踏まえた36協定届の記載例は次のとおりです。

36協定届の記載例(厚生労働省)

ここでは、記名欄について黄色の吹き出しで「協定書を兼ねる場合には、労働者代表(および使用者)の記名・押印などが必要です」と記載されています。

就業規則の意見書への押印・署名について

就業規則を作成・変更などした場合には、労働基準監督署への届出の際に、従業員の過半数代表者などが押印または署名した「就業規則の意見書」を添付する必要があります(労働基準法第90条第2項、労働基準法施行規則第49条第2項)。

今回の改正により、就業規則の意見書について、従業員の過半数代表者などの押印または署名は不要となります(Q&A1-3)。

なお、就業規則の意見書は様式として定められていない(フォーマットが決められていない)書面であるため、押印欄の削除など様式の変更は伴いません。

また、これと同様の趣旨で、寄宿舎規則の届出において提出する従業員の「同意書」についても、押印または署名は不要となります(労働基準法第95条第3項、事業附属寄宿舎規程第1条の2第2項)。

電子申請

改正の施行日以降は、労働基準法施行規則に規定する届出などをe-Gov(電子政府の総合窓口)上で行う場合には、電子署名・電子証明書の添付は不要となり、入力フォーマットに提出する者の氏名を記載することで提出することが可能になります(Q&A2-1)。

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