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【男性の育児休業】「パパ休暇」「パパ・ママ育休プラス」とは?制度や要件について育児介護休業法を解説

育児休業は、男女を問わず、原則として養育する子が1歳に達するまで取得することができます。

そのうち男性の育児休業については、男性の育児参加を推進するなどの目的から、特別な取り扱いが認められています。

そこで、今回は特に男性(パパ)が活用することができる制度として、「パパ休暇」と「パパ・ママ育休プラス」について解説します。

簡単にいうと、「パパ休暇」は育児休業の再取得を認めるための制度、「パパ・ママ育休プラス」は育児休業期間の延長を認める制度をいいます。

パパ休暇とは?

パパ休暇とは?

「パパ休暇」とは、1人の子について、「出生後8週間の期間内」に育児休業を取得することにより、父親が2回の育児休業を取得することができる制度をいいます(育児介護休業法第5条第2項)。

パパ休暇は、出生後8週間の期間内に育児休業を取得することを要件としていることから、肉体的・精神的に不安定になりやすい出産直後の配偶者(ママ)をサポートすることが目的のひとつといえます。

なお、パパ休暇は、配偶者(ママ)が就労していることは要件としておらず、専業主婦の場合であっても取得することができます。

もともと育児休業の取得は、1人の子について、原則として「1回まで」と定められており、再度取得するためには「特別な事情」があることが必要とされています(育児介護休業法第5条第2項)。

「特別な事情」とは、例えば、配偶者の死亡、負傷、疾病などにより、子を養育することが困難となった場合などをいいます。

パパ休暇を取得するための要件

子が出生した後、8週間以内に父親が育児休業を取得し、かつ終了した場合には、例外的にもう一度(2回目の)育児休業を取得することができます。

【パパ休暇の要件】

  1. 父親が、子の出生後8週間以内に育児休業を取得していること
  2. 父親が、子の出生後8週間以内に育児休業を終了していること

「子の出生後8週間以内」とは、子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日までをいいます(育児介護休業法第5条第2項)。

ただし、出産予定日より実際の出産日が早まった場合は、実際の出産日から出産予定日の8週間後までの期間内とし、出産予定日より実際の出産日が遅れた場合には、出産予定日から実際の出産日の8週間後までの期間内に、育児休業を開始し、かつ終了している必要があります(育児介護休業法第5条第2項)。

【例①】出産予定日より実際の出産日が早まった場合

出産予定日…4月1日

実際の出産日…3月25日

産後休業期間…3月25日から5月27日まで

 

【例②】出産予定日より実際の出産日が遅れた場合

出産予定日…4月1日

実際の出産日…4月7日

産後休業期間…4月1日から6月2日まで

なお、従業員による育児休業の申し出は、原則として育児休業の開始予定日の1ヵ月前までに行うこととされています(育児介護休業法第6条第3項)。

パパ・ママ育休プラスとは?

「パパ・ママ育休プラス」制度は、男性の育児休業の取得促進を図る観点から、両親ともに育児休業を取得した場合に、その育児休業の期間について特例を設けるものです。

育児休業は、原則として「子が1歳に達する日」まで取得することができます。

細かい話になりますが、法律上の「子が1歳に達する日」とは、1歳の誕生日の前日を意味します(年齢計算に関する法律)。

例えば、子の誕生日が10月10日の場合、法律上は子が1歳に達する日は10月9日となるため、育児休業の期間は10月9日までとなります。

これに対して、パパ・ママ育休プラス制度を利用した場合、育児休業の対象となる子の年齢について、原則である「1歳到達日まで」から、「1歳2か月の到達日まで」に延長することが認められます

なお、パパ・ママ育休プラス制度によっても、育児休業を取得することができる期間について延長されるものではありません。

したがって、制度を利用した場合であっても、一人あたりの育児休業期間が最大1年間(産後休業期間を含む)であることに変わりはありません

制度の対象になるための要件

制度の対象となるためには、配偶者が子の1歳到達日以前のいずれかの日において育児休業をしていることが要件となります。

また、子が1歳2ヵ月になる以前であれば、両親の育児休業の取得時期が重なっていても問題ありません。

制度の対象にならない育児休業

次のいずれかに該当する育児休業については、制度の対象となりませんので留意する必要があります。

【パパ・ママ育休プラス制度の対象にならない場合】

  1. 本人の育児休業開始予定日が、子の1歳到達日の翌日後である場合
  2. 本人の育児休業開始予定日が、配偶者がしている育児休業期間の初日前である場合

①について、本人(従業員)が育児休業を取得する日が、「子の1歳到達日の翌日後」である場合には、制度の対象にはなりません。

「1歳到達日の翌日後」とは、厳密には、1歳到達日(誕生日の前日)の翌日(誕生日)の後(誕生日の翌日)を意味します。

つまり、本人(従業員)の育児休業は、原則的な育児休業の期間である1歳到達日の翌日までに取得する必要があり、1日でも空白期間があると取得することができないことを意味します。

②について、本人(従業員)の育児休業開始予定日が、配偶者がしている育児休業期間の初日よりも前である場合には、制度の対象にはなりません。

例えば、パパが育児休業を先に取得した後、ママが育児休業を取得した場合には、パパが制度の恩恵を受けること(1歳から1歳2ヵ月までの間の育児休業の取得)はできません。

育児休業給付金との関係

育児休業を取得する場合には、雇用保険の「育児休業給付金」の支給の対象になります。

このことは、パパ・ママ育休プラス制度を利用した場合でも異なることはありません。

したがって、制度を利用した場合、パパとママが共に育児休業給付金を受給することができる場合があります。

なお、育児休業給付金は、育児休業期間に応じて次のとおり定められています。

【育児休業給付金】

  • 育児休業の開始から6ヵ月経過まで…休業開始時賃金日額の67%
  • 育児休業の開始から6ヵ月経過後…休業開始時賃金日額の50%

「休業開始時賃金日額」とは、原則として、育児休業を開始する前6ヵ月間の賃金の総支給額(保険料等が控除される前の額、賞与は除く)を180で除した額とされています。

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上西賢佑(京都うえにし社会保険労務士事務所)
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