人事制度

出戻り社員を再雇用する際の制度設計のポイント

慢性的な人手不足の情勢により、今、あらためて「出戻り社員制度」に注目する企業が増えているように感じます。

そこで、今回は、出戻りの社員を再雇用する場合の制度づくりについて、そのポイントを解説します。

出戻り社員制度とは?

出戻り社員制度とは、諸事情によりいったん会社を退職した後、再び同じ会社へ再就職することを認める制度をいいます。

雇用の流動性が高いアメリカでは、「ブーメラン制度」とも呼ばれ、一般的な人事制度のひとつになっています。

終身雇用の風潮が色濃く残る会社においては、比較的なじみにくい制度であると思います。

しかし、慢性的な人手不足により人材の確保が困難な時代においては、一度会社を退職した社員を再び雇用していくことも、今後は有効な選択肢のひとつであると考えます。

世間の企業の導入状況は?

エン・ジャパン(人材サービス)が2018年のはじめに全国661社の人事担当者に対して実施した調査結果は次のとおりです。

・「一度退職した社員を再雇用したことがある」と回答した企業…72%

これは2年前に同社が実施した調査結果に比べて5ポイント増加しており、この数年で出戻り社員制度への関心が高まっていることが分かります。

一方、同調査では、次の結果も出ています。

・「出戻りを制度として設けている」と回答した企業…8%

この調査結果から、出戻り社員の再雇用は、制度としてではなく、優秀な人材、戻ってきてほしい人材などに限定して、個別の対応により雇用している企業が多いのではないかと考えます。

この制度の導入に際する悩みどころは、「どこまで門戸を広げるか」という点です。

会社経営において、すべての社員について、常に出戻りを受け入れることは、よほどの大企業でない限り困難であるといえます。

したがって、出戻りを制度化する場合においても、会社の状況や判断に応じて、ある程度柔軟に対応できる制度づくりが必要になると考えます。

企業側のメリットは?

上記の調査において、「再雇用をしたことがある」と回答した企業に対して、その理由を質問したところ、

即戦力を求めていたから…72%

・人となりが分かっているため安心だから…68%

という2つの事情によることが比較的多いことが明らかになりました。

つまり、出戻り社員は、

・その会社におけるスキルをすでに身に付けているため、即戦力となるだけでなく、教育に要する時間と費用を抑えることができる

・どのような人物であるかが分かっているため、採用におけるミスマッチが起こりにくく、すぐに社風になじむことができ、コミュニケーションが円滑になる

という大きなメリットがあります。

さらに、

・転職により退職した社員が、新たな会社で経験やスキルを身に付けることができた場合には、再雇用によりその経験やスキルを自社に持ち帰ってくれる

というメリットも見逃せません。

制度設計のポイント

出戻り社員制度の導入にあたっては、主に以下のポイントについて検討する必要があります。

出戻り社員制度導入時の検討ポイント

・制度名(ネーミング)

・出戻り期限

・退職理由

・能力

・処遇(役職、賃金など)

以下、順に見ていきます。

制度名(ネーミング)

制度のネーミングは意外と大事だと考えます。

自社の人事制度の一つとして、採用時にアピールできるポイントにもなるため、記憶に残りやすい制度名、他社と差別化しやすい制度名にすると有効です。

例えば、亀田製菓株式会社では、「ハッピーリターン制度」というネーミングです。

もちろん同社を代表する「ハッピーターン」にちなんでいます。覚えやすく、インパクトがあるのではないでしょうか。

個人的には、成長したサケが、成長し、再び戻ってくるイメージから「カムバック・サーモン制度」というネーミングをお勧めします(笑)

出戻り期限

期限の設定においては、以下の2つを検討します。

何年以上の社歴がある社員を対象にするのか

→入社してすぐに退職した社員については、出戻りを認める必要性に乏しいと考えます。

例えば亀田製菓株式会社では、「勤続3年以上」というボーダーラインを定めています。

②会社を辞めてから何年まで出戻りを認めるのか

会社を辞めてからあまりにも長い期間が経過すると、組織の環境が様変わりする可能性があるため、会社に戻っても活躍できない可能性が高まります。

例えば、富士通株式会社では退職後5年以内、サイボウズ株式会社では6年以内などの上限を設けています。

退職理由

退職理由を限定する場合、懲戒解雇など辞め方に問題がある場合に出戻りを認めないことはもちろんですが、以下のような退職理由のうち、どこまで認めるのかを検討する必要があります。

a.妊娠、育児、出産、妊活

b.配偶者の転勤

c.介護

d.病気

e.留学

f.自己都合退職(転職)

g.自己都合退職(独立・起業)

このあたりは企業ごとに、この制度の趣旨をどのよう捉えるのかによって異なります。

制度を長い人生におけるライフサポートとして福利厚生的に位置付けるのであれば、f.やg.の自己都合退職は含めないということになります。

また、独立や転職により、社員にスキルアップの機会を与え、その後他社で身に付けたスキルを自社で活かしてもらうことを趣旨にするのであれば、a.~e.の事情による退職は含めないということになります。

したがって、制度の導入に際しては、まず、「なぜ出戻りを認めるのか」という制度の趣旨を定義付けることが、大事になります。

能力

企業としては、単に人手不足を補うためだけでなく、できる限り能力のある社員を雇いたいと思うはずです。

そこで、出戻り社員の能力をどこまで求めるのかが問題になります。

ここでは、

・辞めている間に身に付けた経験、スキルを評価する(これらの価値が見い出せない場合には再雇用しない)

・在職中の評価の良し悪しによって、出戻り社員の対象とするかどうかを決定する。

などの選択肢があります。

処遇(役職、賃金など)

処遇については、退職時の処遇と同等にするケースと、辞めている間に身に付けた経験、スキルを評価して処遇に上乗せするケースなどが考えられます。

ここでは、既存の社員の処遇とのバランスに注意する必要があります。

なぜなら、会社を辞めずに続けていた社員の心情からすれば、自身の処遇よりも出戻り社員が厚遇されることに対して当然ながら不公平感が生じるためです。

アンバランスな制度設計をすると、既存の社員のモチベーションが低下したり、出戻り社員が肩身を狭くして働くなどの問題に発展しかねないため、注意が必要です。

法的な問題点

出戻り社員の再雇用は、手続的には中途採用と同じであり、特に法的なリスクはないと考えます。

ただし、一点だけ注意をしなければならないのが、「競業避止義務」です。

出戻り社員が、同業他社に転職した場合で、その会社で競業避止義務を負っていた場合には、出戻り後、そのノウハウなどを利用することが、競業避止義務違反となり得る可能性があります。

出戻り社員に対しては、念のため、他社で従事した業務の内容や、競業避止義務に関する誓約書への署名の有無などを十分にヒアリングしておくことが必要です。

まとめ

これからの時代においては、終身雇用はもはや当たり前ではなく、社員それぞれが自身のキャリアプランを考えていく傾向が強くなると予想します。

また、高齢化に伴う介護などにより、退職を余儀なくされるケースも増加している中、企業として優秀な人材の流出を防止する対策を講じていくことが重要になります。

その有効な対応策のひとつとして、出戻り社員制度は、今後さらに注目されていく制度であると考えています。