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【2022改正】出生時育児休業(男性版産休)とは?制度の内容(期間、分割、就業の可否)や給付金についてわかりやすく解説

はじめに

令和3(2021)年度の第204回国会で、育児・介護休業法の改正案が成立し、同年6月9日に交付されました。

改正内容は多岐にわたりますが、特に改正により新たに創設された「出生時育児休業」は、報道などでは「男性版産休」などと呼ばれ、男性の育児参加を促進するための制度として注目を浴びました。

今回は、この「出生時育児休業」にスポットを当て、制度の内容や休業中の給付金などについて、詳しく解説をします。

なお、執筆日現在(2021年8月21日)で確定していない省令については、厚生労働省の「育児・介護休業法の改正を踏まえた主な省令事項②(案)」をもとに記載し、該当箇所には(指針案)と付記しています。

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「出生時育児休業(男性版産休)」とは?「育児休業」「パパ休暇」との違いは?

「出生時育児休業」は、今回の法律の改正によって、新たに創設された制度であり、報道などでは「男性版産休」と呼ばれています。

「出生時育児休業」とは、男性が、子の出生後8週間以内に、最大4週間まで休業することができる制度をいいます(育児・介護休業法第9条の2第1項)。

もともと、男性でも、子が1歳になるまで育児休業を取得することができますが、出生時育児休業は、それとは別の制度として休業することができる制度です。

「産前産後休業」と「育児休業」の違い

女性は、産前6週間、産後8週間にわたり、「産前産後休業」を取得することができます

特に、女性にとっての産後8週間は、母体の回復に専念するための期間とされており、労働基準法では、産後8週間は女性従業員の就業を原則として禁止しています(労働基準法第65条第2項)。

そして、産後休業が終わると、引き続いて「育児休業」を取得することができ、原則として子が1歳になるまで休業することができます(育児・介護休業法第5条)。

「出生時育児休業」と「パパ休暇」の違い

一方、男性には、産前産後休業という制度はありません。

そこで、産後の時期に男性の育児参加を促し、配偶者への協力を行うことを目的として、「パパ休暇」という制度がありました。

「パパ休暇」とは、子の出生後8週間の期間内(女性の産後休業期間内)に育児休業を取得することにより、父親が2回の育児休業(本来は1回のみ)を取得することができる制度をいいます。

パパ休暇は、出生時育児休業の施行に伴い、廃止されることとなりました(男性がさらに休業しやすくするように、パパ休暇を発展的に解消したというイメージです)。

出生時育児休業を取得できる従業員(制度の対象となる従業員)

原則と例外

出生時育児休業を取得できる従業員は、原則として、すべての従業員とされています。

ただし、次の従業員については、対象から除かれます。

【出生時育児休業を取得できない従業員(例外)】

  1. 有期雇用の従業員
  2. 労使協定で除外された従業員

有期雇用の従業員(例外①)

子の出生日(出産予定日前に出生した場合は、出産予定日)から起算して、8週間を経過する日の翌日から、6ヵ月を経過する日までに雇用が終了することが明らかな有期雇用の従業員は、対象から除かれます(育児・介護休業法第9条の2第1項)。

労使協定で除外された従業員(例外②)

次の従業員については、会社が従業員代表者との間で労使協定を締結することにより、出生時育児休業の対象から除くことが認められます(育児・介護休業法第9条の3第2項、省令案)。

【労使協定で除外できる従業員】

  • 入社後1年未満の従業員
  • 出生時育児休業の申出日から8週間以内に雇用が終了する従業員
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

休業できる期間(対象期間・休業期間)と回数(分割取得)

対象期間

「対象期間」とは、出生時育児休業を取得できる対象となる期間をいい、原則として「子の出生日から8週間以内」と定められています。

実際の出生日が、出産予定日と異なる場合には、対象期間は次のように取り扱います(育児・介護休業法第9条の2第1項)。

出産予定日「前」に出生した場合

出生日から、出産予定日の8週間後までが対象期間となります。

出産予定日「後」に出生した場合

出産予定日から、出生日の8週間後までが対象期間となります。

休業期間

「休業期間」とは、対象期間中において、従業員が実際に休業する期間をいい、「4週間以内」と定められています。

休業回数(分割取得)

出生時育児休業は、2回に分割して取得することができます(育児・介護休業法第9条の2第2項)。

2回に分割した場合には、合計で28日を限度として、出生時育児休業を取得することができます。

分割を利用することにより、例えば、子どもの出生時や妻の退院時に10日間休業し、その後、妻が里帰りから戻るタイミングで残りの18日間休業するといったことが可能になります。

ただし、休業を2回に分割する場合には、原則として、初回の申請時に2回分をまとめて申請する必要があります

従業員が、後から分割を申し出て2回目の休業を申請した場合には、会社は2回目の休業の申請を拒否することができるとされています(育児・介護休業法第9条の3)。

出生時育児休業の申請期限と申請方法

申請期限(原則)

出生時育児休業の申請は、原則として、育児休業の開始予定日の2週間前までに行う必要があります(育児・介護休業法第9条の3第3項)。

もちろん、会社の判断でこれよりも短い期間とすることは問題ありません。

改正前の法律でも、男性が産後8週間の期間内に育児休業を取得することは可能でしたが、育児休業の申請期限が1ヵ月前までとされていたことから、法律の改正によって、より柔軟に休業を取得できるように配慮されました。

申請期限(例外)

会社が従業員代表者との間で労使協定を締結した場合には、申請の期限を1ヵ月前までとすることが認められます(育児・介護休業法第9条の3第4項)。

ただし、労使協定を締結するための要件として、会社は職場環境の整備に関する措置を講じる必要があります。

職場環境の整備に関する措置は、次の3つとされています(省令案)。

【職場環境の整備に関する措置】

①次に掲げる措置のうち、2以上の措置を講ずること

  • 従業員に対する育児休業にかかる研修の実施
  • 育児休業に関する相談体制の整備
  • 従業員の育児休業の取得に関する事例の収集および当該事例の提供
  • 従業員に対する育児休業に関する制度および育児休業の取得の促進に関する方針の周知
  • 育児休業の申出をした従業員の育児休業の取得が円滑に行われるようにするための、業務の配分または人員の配置にかかる必要な措置

②育児休業の取得に関する定量的な目標を設定し、育児休業の取得の促進に関する方針を周知すること

③育児休業の申出にかかる当該従業員の意向を確認するための措置を講じた上で、その意向を把握するための取り組みを行うこと

申請方法

出生時育児休業の申請方法は、書面(申請書)を提出する方法の他、会社が適当と認める場合には、メールやファックスによる申請も認められます(省令案)。

出生時育児休業中に働くことの可否(休業中の就業)

一定の場合には、休業中の就業が可能

出生時育児休業の期間中であっても、一定の要件を満たす場合には、部分的に就業することが認められます(育児・介護休業法第9条の5第2項)。

休業中に就業することができる点が、出生時育児休業の大きな特徴といえます。

ただし、無制限に働くことができないように、働くことができる上限日数や上限時間について定められています。

申請方法・手続

全体像

出生時育児休業期間中に就業する場合の手続の流れは次のとおりです。

次の①~④の手続は、休業開始予定日の前日までに行う必要があります。

休業が始まってから、下記の手続きをすることはできず、休業期間に入ってから急に「この日に出勤してほしい」など、会社が就業を要請することはできません。

【出生時育児休業期間中に就業する場合の手続の流れ】

  1. 労使協定の締結
  2. 従業員から会社への就業可能日数などの申出
  3. 会社から従業員への就業日時の提示
  4. 会社の提示(③)に対する従業員の同意

労使協定の締結(①)

従業員が出生時育児休業期間中に就業する場合には、会社は、従業員代表者との間で労使協定を締結する必要があります(育児・介護休業法第9条の5第2項)。

労使協定においては、就業の対象となる従業員の範囲(対象者)を定めておく必要があり、対象とされていない従業員を就業させることはできないため、留意する必要があります。

従業員から会社への就業可能日数などの申し出(②)

出生時育児休業をしている従業員が、休業中に就業することを希望する場合には、出生時育児休業の開始予定日の前日までに、次の内容を会社に申し出ることが必要です(育児・介護休業法第9条の5第2項、②③は省令案)。

【休業中に就業する場合の申請内容】

①就業することができる(就業可能日)

②①において就業することができる時間帯所定労働時間内の時間帯に限る)

③その他の労働条件

出生時育児休業中の就業可能日数などの申し出(および後述④の同意)は、書面(申請書)を提出する方法の他、会社が適当と認める場合には、メールやファックスによる申請も認められます(省令案)。就業できる時間帯については、所定労働時間内(定時内)である必要があり、時間外労働(残業)は制度として想定されていません。

会社から従業員への就業日時の提示(③)

会社は、従業員を就業させる必要が生じた場合は、事前に従業員から申し出のあった就業日時の範囲内で、従業員に対して、就業日時を提示します(育児・介護休業法第9条の5第4項)。

会社の提示に対する従業員の同意(④)

休業中の就業については、会社の提示(③)に対する従業員の同意を得た場合に限り、行うことができます(育児・介護休業法第9条の5第4項)。

この同意は、休業開始予定日の前日までは、従業員から撤回することが認められます。

なお、配偶者が亡くなった場合など、特別な事情がある場合は、休業開始後に従業員が同意を撤回することが認められます。

出生時育児休業中の就業の上限時間・上限日数

従業員が出生時育児休業中に就業する場合には、次の範囲内で行うことが必要です(省令案)。

【出生時育児休業中の就業の上限時間・上限日数】

①就業日数の合計は、出生時育児休業期間の所定労働日数の半分以下とすること(1日未満の端数があるときは、これを切り捨てた日数とする)

②就業日における労働時間の合計は、出生時育児休業期間における所定労働時間の合計の半分以下とすること。

③出生時育児休業開始予定日とされた日、または、出生時育児休業終了予定日とされた日を就業日とする場合は、当該日の労働時間数は、当該日の所定労働時間数に満たないものとすること。

【例】

所定労働時間が1日8時間の会社で、14日間(所定労働日数)の出生時育児休業を取得する場合

①就業日数の合計

7日以下(14日÷2)

②労働時間の合計

56時間以下(8時間×14日÷2)

③開始予定日・開始終了日の所定労働時間

8時間未満

つまり、上記の状況において、休業中に就業する場合には、7日以下、かつ、合計で56時間以下に収める必要があり、休業開始予定日または終了日に就業する場合は、その日の労働時間を8時間未満に収める必要があります。上記の基準のうち①と②は、就業日数と労働時間ともに、休業期間中の就業日数と労働時間の半分以下に収めることを求めるものです。

会社による不利益な取り扱いの禁止

会社は従業員に対して、休業中の就業に関する次に掲げる事由を理由として、解雇その他不利益な取り扱いをしてはなりません(育児・介護休業法第10条、省令案)。

  • 休業中に就業を希望する旨の申し出をしなかったこと
  • 休業中に就業を希望する旨の申し出が会社の意に反する内容であったこと
  • 休業中の就業の申し出にかかる就業可能日などの変更をしたこと、または当該申し出の撤回をしたこと
  • 休業中の就業にかかる会社からの提示に対して同意をしなかったこと
  • 休業中の就業にかかる会社との同意の全部または一部の撤回をしたこと

出生時育児休業給付金の創設

出生時育児休業の創設に伴って、雇用保険法が改正され、新たな給付として「出生時育児休業給付金(以下、「給付金」といいます)」が創設されます(雇用保険法第61条の8)。

給付金の額については、育児休業給付金と同様となります。

給付金を受給できる要件

給付金を受給するためには、休業開始日前の2年間に、雇用保険の被保険者であった期間(みなし被保険者期間)が12ヵ月以上あることが必要です。

受給できる回数

出生時育児休業は2回まで分割することができるため、給付金も2回まで受給することができます。

給付金の額

休業1日あたり、休業開始時の賃金日額の67%が支給されます。

なお、その後、育児休業を取得した場合には、育児休業給付金が賃金日額の67%支給される180日間(181日目以降は50%)について、出生時育児休業給付金を受給した日数も通算されます

会社から賃金が支払われた場合の調整

休業中に就業するなどにより、会社から賃金が支払われた場合には、会社から支払われた賃金と、給付金の額の合計が、休業開始前の賃金日額の80%を超える場合には、その超える部分について給付金が減額されます。

出生時育児休業の施行日

出生時育児休業の施行日は、「法律の公布日から1年6ヵ月以内」で政令によって定める日とされています。

法律の公布日は令和3(2021)年6月9日であることから、遅くとも、令和4(2022)年の12月上旬までには施行されることを意味します。

執筆日現在の予定では、施行日は令和4(2022)年10月1日になるとされています。

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