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【令和4(2022)年改正】公益通報者保護法改正による内部通報体制の義務化について

はじめに

公益通報者保護法」とは、企業や行政機関の不祥事による被害の拡大を防止するためになされた内部通報(公益通報)について、通報者(従業員など)の保護に関するルールを定めた法律をいいます。

公益通報者保護法の改正が2020(令和2)年6月12日に交付され、公布の日から2年以内(2022年6月まで)に施行されるとされています。

施行日は現時点では未定ですが、会社が十分な準備期間を確保できるよう、2022(令和4)年4月頃の施行を予定しているとされています(「公益通報者保護法の一部を改正する法律に関するQ&A(令和2年8月版)」(以下、「Q&A」という))。

今回は、公益通報者保護法の改正点について、「公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会報告書(令和3年4月)」(以下、「検討会報告書」という)と、「公益通報者保護法第 11 条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(令和3年8月 20 日内閣府告示第 118 号)」(以下、「指針」という)を参考に解説をします。

今回は法律の改正内容のうち、特に会社において対応すべき事項を取り上げています。

法律の改正内容には、行政機関に対する通報に関するものも含まれますが、割愛しています。

公益通報者保護法の改正のポイント

今回の法律の改正は、事業者による不祥事が後を絶たない現状をふまえ、主に次の2点を目的として行われるものです。

  • 通報者が安心して通報をできるように配慮する
  • 会社が自ら、早期に不正を是正することができる体制を構築する

上記の目的から、主に次の内容について改正が行われます。

【法改正のポイント】

  • 従業員数301人以上の会社に対して、内部通報への体制整備を義務化
  • 内部調査に従事する者の守秘義務を定める(刑事罰あり)
  • 保護の対象者・内容を拡大

特に、会社の従業員数を基準として、内部通報にかかる体制の整備を義務付けたことがポイントです。

法律の対象となる会社においては、法律の改正を機に、会社内の内部通報体制の整備や、それに伴う社内規程などの見直しといった対応が必要になります。

内部通報への体制整備の義務化

法律の対象となる会社規模

法律の改正により、従業員数が301人以上の会社は、内部通報体制を整備・構築することが義務付けられます

また、従業員数が300人以下の会社は、法律上「中小事業者」に該当し、上記の対応が「努力義務」とされています(法第11条第3項)。

努力義務とは、法律で規制するのではなく、会社の自発的な努力を促すものをいい、対応をしなかったとしても刑事罰や行政罰などの制裁はありません。

また、ここでいう「従業員数」とは、常態として雇用する従業員をいいます。

したがって、パート・アルバイトなどであっても、繁忙期だけ一時的・臨時的に雇うような場合を除いて、従業員数に含まれる場合があるため、従業員数のカウントに注意が必要です(Q&A)。

会社に義務付けられる内容

会社に義務付けられる具体的な内容は次のとおりです。

【会社の義務】

  1. 公益通報への対応業務に従事する者(公益通報対応業務従事者)を選任する義務(法第11条第1項)
  2. 従業員からの内部通報に適切に対応する体制を整備する義務(法第11条第2項)

公益通報対応業務従事者の選任義務(①)

会社は、公益通報(内部通報)への対応業務に従事する従業員を定める必要があります。

どのようなポジション(職位など)であるか、あるいは資格・経験があるかなどは特に定められていません。

定め方としては、個別に担当者を指名する方法の他、社内規定などで、一定のポストに従事する者と定める方法(例えば、「総務課の課長を内部通報への対応責任者とする」などと定める)があります(Q&A)。

体制の整備義務(②)

会社は、従業員からの内部通報に適切に対応する体制を整備し、その他必要な措置を講じる義務があります。

これらの体制の具体例は、主に次のとおりです(Q&A、指針)。

【体制整備の内容】

  1. 通報受付窓口の設置など、公益通報対応業務を行う体制の整備
  2. 公益通報者を保護する体制の整備
  3. 内部通報対応体制を実効的に機能させるための措置
①通報受付窓口の設置など、公益通報対応業務を行う体制の整備

通報窓口を設置し、通報に対する調査や、是正のために必要な措置をとる部署や責任者を定める必要があります。

また、組織の長や幹部などが関連する事案については、これらの者からの独立した体制を設ける必要があります(指針)。

そのため、内部公益通報受付窓口については、社内の部署に設置するだけでは対応に行き詰まる可能性もあるため、社内窓口に加えて、社外(弁護士などの外部委託先)に設置することも検討する必要があります(検討会報告書)。

また、組織の実態に応じて、内部公益通報受付窓口が他の通報窓口(ハラスメントの通報・相談窓口など)を兼ねることなども可能です(検討会報告書)。

②公益通報者を保護する体制の整備

従業員が通報対象事実を知り、内部通報を行うことにより、内部通報を理由とした解雇その他不利益な取扱いを受けるおそれがあれば、公益通報を躊躇してしまいます。

このような事態を防ぐためには、会社は、不利益な取扱いが行われた場合に、当該行為をした役員や従業員に対して、行為態様、被害の程度、その他の事情を考慮して、懲戒処分など適切な措置をとらなければならないと考えられます(検討会報告書)。

また、範囲外共有(通報者を特定させる情報を必要最小限の範囲を超えて共有する行為)や通報者の詮索の防止についても、それらが行われた場合の通報者の救済や被害の回復に努めるとともに、行為者に対する懲戒処分など適切な措置を講じる必要があります。

③内部通報対応体制を実効的に機能させるための措置

内部通報体制を社内の役員および従業員に教育・周知することで、内部通報体制が実際に機能するように取り組む必要があります。

また、通報のあった内容や対応など、記録を作成し、通報者のプライバシー保護などに支障がない範囲において、記録の保管方法、保管期限、閲覧権限者のルールなどを定める必要があります。

さらに、上記の内部通報体制を社内規程などに定め、担当者が規程に従って運用していく必要があります。

義務を履行しない場合の行政措置

この整備義務を適切に履行しない場合、次の行政措置の対象となります(法第15条、16条)。

【義務を履行しない場合の行政措置】

・行政機関による助言指導

・行政機関による勧告

・勧告に従わない場合、企業名などの公表

内部調査に従事する者の守秘義務

守秘義務の内容

法律の改正により、公益通報対応業務従事者の義務として、「正当な理由」がなく、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって、公益通報者を特定させるものを漏らしてはならない義務が新たに定められました(法第12条)。

逆にいうと、次のような「正当な理由」がある場合には、必要性の限度で公益通報者を伝えることが認められます。

【正当な理由の例】

  • 公益通報者本人の同意がある場合
  • 法令に基づく場合
  • 調査等に必要である範囲の従事者間で情報共有する場合
  • ハラスメントが公益通報に該当する場合などにおいて、公益通報者が通報対象事実に関する被害者と同一人物である等のために、調査等を進める上で、公益通報者の特定を避けることが著しく困難である場合

また、「公益通報者を特定させる事項」とは、公益通報者の氏名や社員番号など具体的な情報はもちろん、性別などの一般的な属性であっても、他の情報を照合することで、特定の人物が公益通報者であると判断できるような場合も該当します。

罰則

守秘義務に違反した場合、刑事罰の対象となり、30万円以下の罰金が科せられます(法第21条)。

保護の対象者・内容の拡大

保護の対象者の拡大

法律で保護される通報者の範囲について、従来は「労働者」と定められていたのが、法律の改正により「労働者であった者で、退職後1年以内に通報した者」および「役員」にまで拡大されました(法第2条第1項第1~4号)。

保護の内容の拡大

通報者の保護の内容として、法律の改正により、通報に伴う損害賠償責任の免除が定められました(法第7条)。

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