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法定休日・法定外休日とは?
休日とは
「休日」とは、従業員が労働する義務を負わない日のことをいいます。
法定休日とは
法定休日の定義
休日については、法律上、原則として「毎週少なくとも1回」の休日を与えなければならないと定められており、この休日のことを「法定休日」といいます(労働基準法第35条第1項)。
つまり、法定休日とは、法律が定めている「最低限の休日」といえます。
また、法定休日は1日単位で与える必要があり、ここでいう「1日」とは、午前0時から午後12時までの1暦日をいいます(昭和23年4月5日基発535号)。
単に24時間空けて休んだだけでは、原則として、法定休日とは認められないことに留意する必要があります。
法定休日は何曜日?
法定休日は、日曜日や祝祭日など、曜日とは関係ありません。
毎週少なくとも1回の休日を与えている限り、例えば、土曜日、日曜日や祝祭日を必ずしも休日にする必要はありません。
法定外休日とは(法定休日との違い)
一方、法定休日を上回る、会社の休日(法律で義務付けられていない休日)のことを、「法定外休日」といいます。
例えば、毎週土曜日と日曜日を休日とする、いわゆる完全週休2日制の会社においては、いずれか1日が法定休日、もう1日が法定外休日となります。
このとき、必ずしも日曜日を法定休日とする必要はなく、土曜日と日曜日のいずれを法定休日とするのかは、会社の判断によります(詳しくは後述)。
従業員にとっては、法定休日であるか法定外休日であるかは、あまり意識しないことが多いといえますが、会社の労務管理においては、後述する割増賃金の算定などにも影響するため、両者を区別しておくことが必要です。
法定休日を与えなかった場合の罰則
会社が法定休日を与えなかった場合の罰則として、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が定められています(労働基準法第119条)。
法定休日の与え方の例外(変形休日制)
変形休日制とは
前述のとおり、法定休日は、原則として「毎週少なくとも1回」の休日を与える必要があります。
ただし、例外として、「4週間を通じて4日以上」の休日を与える場合には、毎週少なくとも1回の休日を与える必要はありません(労働基準法第35条第2項)
これを「変形休日制」といいます。
変形休日制を採用する場合の手続
変形休日制を採用する場合には、就業規則などで変形休日制を採用する旨を記載したうえで、4週間の起算日を明記する必要があります(労働基準法施行規則第12条の2第2項)。
この場合、起算日からの4週間ごとに4日の休日があればよく、どの4週間を区切ってもその中に4日の休日がなければならない、とするものではありません(昭和29年9月20日基発1384号)。
法定休日労働と割増賃金
法定休日に働いた従業員に対しては、会社は通常の賃金に3割5分以上の賃金を上乗せした賃金(これを「割増賃金」といいます)を支払う義務があります(労働基準法第37条第1項)。
なお、通常の時間外労働(平日の残業など)に対する割増賃金としては、通常の賃金に2割5分以上の賃金を上乗せした賃金を支払う義務があります(労働基準法第37条第1項)。
法定休日労働と36協定
従業員が法定休日に働く場合には、事前に労使協定(以下、「36(さぶろく)協定」といいます)の締結が必要です(労働基準法第36条第1項)。
36協定とは、会社と従業員代表者との間で、時間外労働と休日労働に関する事項を取り決めることをいいます。
36協定の書面は、厚生労働省の所定の様式(様式第9号)で作成する必要があり、法定休日労働に関する記入欄としては、「労働させることができる法定休日の日数」と「労働させることができる法定休日における始業及び終業の時刻」が設けられています。
「労働させることができる法定休日の日数」の記入欄には、例えば「1ヵ月に1日」などのように記載します。
「労働させることができる法定休日における始業及び終業の時刻」の記入欄には、例えば「8時30分から17時30分」などのように記載します。
さらに、締結した36協定は、管轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
法定休日を特定する必要性
休日の特定の必要性
「休日」については、就業規則の絶対的必要記載事項とされており、必ず就業規則にその内容を記載する必要があります(労働基準法第89条)。
この点について、就業規則においては、休日の「日数」と「与え方」を定める必要があると解されており、休日を特定すること(「毎週土曜日と日曜日を休日とする」など)まで会社に義務付けていません。
つまり、法定休日の曜日を決めなくても、結果的に1週間に1日の休日があれば違法とはなりません。
そこで、休日については、「毎週2日とし、曜日はその都度指定する」という定め方をするようなことも認められます。
実際に、接客業やサービス業などでは、予約や業務の状況に応じてシフトを組み、その過程で休日を決定することがあります。
もちろん、休日がいつになるのか、従業員にとってまったく予測できないことは不利益が大きいため、休日がいつ与えられるのかについて、できる限り特定する方が望ましいことは言うまでもありません。
法定休日の特定の必要性
「法定休日を特定してべきかどうか」については、実務においても見解が分かれるところです。
この点、休日のうちどの日が法定休日であるかを特定することにより、その法定休日に就労した場合には、前後の就労の状況に関係なく、その事実をもって3割5分の割増賃金が生じることになります。
例えば、「毎週、日曜日を法定休日とする」と就業規則に定めた場合には、日曜日に出勤したことをもって、法定休日労働をしたこととなります。
このことは、たとえ前日の土曜日が所定休日で、休んでいたとしても異なりません。
他方、法定休日を特定しなければ、週休2日制の場合で法定休日を特定していなくても、どちらかの休日に休めていれば、一方の休日に働いても、法定休日労働としての割増賃金を支払う必要はなくなります。
そうなると、会社にとっては、法定休日は特定しない方が、割増賃金の支払い義務という観点では得策であるように捉えられます。
法定休日の特定に関する行政通達
労働基準監督署の指導指針となる行政通達では、次のとおり法定休日を特定することが望ましいとしています。
あくまで指導指針に過ぎませんが、考え方のひとつとして、参考にしてください。
【行政通達】
法第35条は必ずしも休日を特定すべきことを要求していないが、特定することがまた法の趣旨に沿うものであるから、就業規則の中で単に1週間につき1日といっただけではなく、具体的に一定の日を休日と定める方法を規定するよう指導されたい。
(昭和23年5月5日基発682号・昭和63年3月14日基発150号)
また、厚生労働省の平成21年10月5日付の「改正労働基準法に係る質疑応答」においては、次のように示しています。
法定休日が特定されていない場合で、暦週(日~土)の日曜日及び土曜日の両方に労働した場合は、当該暦週において後順に位置する土曜日における労働が法定休日労働となる。
他方、定めがない場合には、暦週によることになります。1週間の始期をどの曜日にするのかについては、就業規則に定めがあればそれに従います。
暦週の始期は日曜日、終期は土曜日までとするのが行政解釈です(上記質疑応答、昭和63年1月1日基発第1号)。
法定休日の特定に関する裁判例
裁判例では、会社には毎週1回の休日を与える義務があることから、暦週でみて日曜日から土曜日までの間に1日も休日がない場合には、「歴週の最終日である土曜日」を法定休日とみなすことが妥当であると判断したものがあります(東京地方裁判所平成20年1月28日判決 日本マクドナルド事件)。
一方、別の裁判例では、土曜日と日曜日を休みとする週休2日制で法定休日を特定していなかった会社について、暦週の後順の土曜日が法定休日だとした会社側に対して、「旧来からの休日である日曜が法定休日であると解するのが一般的な社会通念に合致する」として、日曜日を法定休日とした事例もあります(東京地方裁判所平成23年12月27日判決 HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド賃金等請求事件)。
裁判例のように未払い残業代を請求する裁判で請求額を算定する際に、法定休日の特定が問題となることがありますが、最高裁判所の裁判例はなく、現状は判断が統一されているとまではいえません。
法定休日の特定に関する実務
労務管理の実務においては、給与計算における便宜のために、法定休日を日曜日などに特定し、その日に出勤したことをもって割増賃金を支払うことがあります。
これは、システムによる勤怠管理においては法定休日を特定しない場合の管理が煩雑になり、また担当者が給与計算をするうえでミスを減らすことができるためです。
したがって、法定休日を特定したほうが、割増賃金の支払い漏れを防ぎやすく、結果的に無用な労務トラブルを避けることに資するといえます。
ただし、法定休日を特定することにより、会社の割増賃金のコストが増加する場合があるため、メリット・デメリットを勘案しながら慎重に判断する必要があります。