労働基準法

有給休暇とは?基準日・日数・賃金・取得義務など労働基準法をわかりやすく解説

有給休暇とはどのような制度か?

有給休暇とは?

「有給休暇」とは、会社で定められている休日の他に、従業員の権利として、給料を保障されたうえで休暇を取得することを認める制度をいいます。

有給休暇は、正確には「年次有給休暇」といい、「年次」の名のとおり、従業員が同じ会社に勤務し続ける限り、毎年1回、法律で決められた日数の有給休暇が与えられます。

有給休暇は、労働基準法でその内容が定められており、従業員にとって特に関心の高い権利のひとつといえます。

また、法律による有給休暇とは別に、会社の福利厚生として、「慶弔休暇」や「病気休暇」などの名目で、特別に有給の休暇を与える会社もあります。

有給休暇の平均取得日数・平均取得率

令和2(2020)年度の「就労条件総合調査」(2020年10月30日厚生労働省発表)では、各企業における有給休暇の取得状況は次のとおりです(有効回答数4,191社)。

【有給休暇の取得状況】

  • 労働者1人あたりの平均付与日数…18.0日(前年調査18.0日)
  • 上記のうち、平均取得日数…10.1日(前年調査9.4%)
  • 上記のうち、平均取得率…56.3%(前年調査52.4%)

平均取得日数および平均取得率は、昭和59年以降の調査において、過去最多(最高)となりました。

有給休暇の取得日数が増加傾向にある要因として、働き方改革の名のもと2019年4月1日に労働基準法が改正され、年5日の有給休暇の取得が義務化されたこと(内容は後述)が特に影響していると考えます。

有給休暇はいつ、何日与えられるか?(有給休暇の基準日・付与日数)

有給休暇の要件

有給休暇は、法律上、従業員が次の2つの要件を満たすことによって与えられます。

【有給休暇の要件】

  1. 入社日から6ヵ月間、継続して勤務すること
  2. 全労働日の8割以上出勤すること

上記要件のとおり、有給休暇が与えられるためには、入社日から6ヵ月間継続して勤務することに加えて、その期間中の全労働日の8割以上出勤していることが必要となります。

有給休暇の基準日とは?

有給休暇は、前述のとおり、従業員が入社して6ヵ月が経過した時点で、初めて与えられます。

例えば、ある年の4月1日に入社した従業員は、その年の10月1日に、初めて(1回目)の有給休暇が与えられます。

このとき、有給休暇が与えられる日(10月1日)のことを有給休暇の「基準日」といいます(なお、基準日のことを「付与日」ということもあります)。

そして、次回(2回目以降)の有給休暇は、この基準日からさらに1年が経過した、翌年10月1日となります。

このように、基準日は、従業員の入社日に応じて決まることから、年度途中に入社する従業員が多い会社では、基準日の異なる従業員が多く存在することになり、労務管理が煩雑になりやすい傾向があります。

そこで、例えば、すべての従業員の基準日を4月1日に統一するなどして、労務管理の負担を軽減することがあり、これを「有給休暇の斉一的付与」といいます。

有給休暇の斉一的取扱い(斉一的付与・基準日の統一)とは?図解でわかりやすく解説有給休暇の斉一的取扱い(斉一的付与・基準日の統一)とは? 「有給休暇の斉一的取扱い」とは、簡単にいうと、「有給休暇の基準日(権利が発生...

有給休暇の付与日数は何日?

有給休暇の付与日数は、入社日以降の勤続年数に応じて、次の表のとおり定められています。

この表によると、入社日から6年6ヵ月が経過した時点で、有給休暇の付与日数は最大(20日)となり、次年度以降も毎年20日間の有給休暇が与えられることとなります。

勤続年数 0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年以降
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

上記の付与日数は、法律で定められている下限の日数であるため、これを下回る有給休暇を与えることは、法律に違反することとなります。

また、会社によっては、福利厚生として、法律どおりの付与日数を上回る有給休暇を与えていることもあります(例えば、6ヵ月勤務で15日間の有給休暇を与えるなど)。

有給休暇の取得単位は?(1日・半日・1時間など)

有給休暇は1日を単位として与えられますが、その取得にあたっては、1日単位だけでなく、1日を分割して、半日単位や1時間単位で取得することができる場合があります

1日単位

有給休暇は、1日を単位として取得することが原則です。

また、複数日分の有給休暇をまとめて取得することも可能です。

半日単位

有給休暇は、会社が認める場合には、半日単位で取得することも可能です。

例えば、1日の労働時間(例えば8時間)を2分割(4時間ずつ)にして取得することや、午前と午後とに分けて取得するような場合が考えられます。

1時間単位

会社が労働基準法に定められている手続きを行うことによって、1時間単位で有給休暇を取得することができる制度もあります。

この場合、最小の単位が1時間になるため、例えば、2時間や3時間を取得単位とすることもできるようになります。

なお、有給休暇を1時間未満に分割して、15分単位や30分単位などの取得をすることは、現行の法律では認められません。

1時間単位の有給休暇(時間単位年休)とは?上限日数、繰越、労使協定など労働基準法を解説働き方改革を推進すべく、2019年4月1日に労働基準法が改正され、会社には、原則として、年5日間の有給休暇を従業員に取得させることが義務...

有給休暇の繰り越しはいつまで認められるか?(有給休暇の時効)

ある年に与えられた有給休暇は、その翌年まで繰り越すことが認められます

これは、有給休暇は、法律上2年間の時効によって消滅するためです。

なお、法律の定めに関わらず、会社の福利厚生として、有給休暇を繰り越すことができる期間を延長することは問題ありません。

【有給休暇の繰り越しの例】

  • 入社日から6ヵ月が経過した日…10日間(①)
  • 入社日から1年6ヵ月が経過した日…11日間(②)
  • 入社日から2年6ヵ月が経過した日…12日間(③)

上記の例では、入社日から1年6ヵ月が経過した日に、最大「21日間(①+②)」の有給休暇が与えられます。

これは、①で付与された有給休暇10日間について、翌年に繰り越すことが認められるためです。

さらに、入社日から2年6ヵ月が経過した日には、最大「23日間(②+③)」の有給休暇が与えられます。

このとき、最初に与えられた有給休暇の10日間(①)は、2年が経過することによって、時効により消滅することとなります。

有給休暇を取得した日の賃金(給料)はいくらか?

従業員が有給休暇を取得した場合の賃金(給料)の計算方法については、労働基準法によって、次の3つの方法が認められています。

【有給休暇を取得した日の賃金】

  1. 通常の賃金を支払う方法
  2. 平均賃金を支払う方法
  3. 健康保険法の標準報酬日額を支払う方法

原則的な計算方法は①または②であり、③の方法は「労使協定(会社と従業員との間で行われる協定書の締結)」がある場合に認められます。

一般的には、有給休暇を取得しても、いつもと給料が変わらないというのが自然であり、その意味から①の取り扱いをすることが、従業員にとっては分かりやすいですし、会社にとっても事務処理が簡便です。

②または③による場合には、いつもの給料とは異なる額になることがあります。

有休取得時の賃金(給料)はいくら?3つの計算方法を正社員・パート(アルバイト)別に解説有給休暇を取得した場合、多くの方は、その日はいつもと同じ給料が支払われていると認識しているのではないでしょうか。 しかし、法律的に...

パート・アルバイトにも有給休暇は認められるか?(有給休暇の比例付与)

有給休暇は正社員に限らず、パート・アルバイトなどの従業員についても、有給休暇が与えられる対象になります

しかし、これらの従業員は一般に、正社員よりも働く時間が短く、あるいは出勤日数が少ないことがあります。

そこで、法律では、パート・アルバイトなど労働時間が短く、あるいは出勤日数が少ない従業員については、その「労働時間」と「労働日数」に応じて、与えられる有給休暇の日数が異なる取り扱いをしています。

このような仕組みのことを「有給休暇の比例付与」といいます。

有給休暇の比例付与の対象となる従業員

比例付与の対象となるのは、次の2つの要件のいずれにも該当する従業員です。

【比例付与の対象となる従業員】

  1. 1週間の所定労働時間が30時間未満であること
  2. 1週間の所定労働日数が4日以下であること、または、1年間の所定労働日数が216日以下であること

上記の要件のいずれかに該当しない場合、つまり、1週間に30時間以上働いているような従業員については、パート・アルバイトなどの従業員であっても、通常どおり(正社員と同じ)有給休暇が与えられることとなります。

有給休暇の比例付与の日数

有給休暇の比例付与の日数は、1週間または1年間の所定労働日数と、勤続年数との組み合わせによって決まります。

所定労働日数が多いほど、与えられる有給休暇の日数は多くなります。

所定労働日数 有給休暇の付与日数
1週間 1年間 0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年以降
4日 169日~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日
【比例付与】パート・アルバイトの有給休暇の日数・賃金額の計算をわかりやすく解説有給休暇は、法律にもとづく従業員の権利であることは周知の事実ですが、パート・アルバイトで働く従業員の有給休暇については、その制度について...

有給休暇の取得義務(5日間)とは?

有給休暇の取得義務とは?

会社は従業員に対して、年に5日間の有給休暇を取得させる義務があります。

この有給休暇の取得義務は、2019年4月1日の労働基準法の改正によって新たに設けられました。

・有給休暇の取得義務の対象となる従業員

有給休暇の取得義務の対象となる従業員は、年に10日以上の有給休暇が与えられる従業員とされています。

これは、正社員でいうと、入社後6ヵ月が経過した従業員が対象になることを意味します。

なお、パート・アルバイトなどの従業員であっても、前述の「比例付与」の仕組みによって、条件に当てはまれば年10日以上の有給休暇が与えられる場合があり、有給休暇の取得義務の対象になることがあるため留意する必要があります。

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有給休暇の買い取りは認められるか?

「有給休暇の買い取り」とは、一般に、会社が従業員の有給休暇を、金銭で買い取ることによって、買い取った日数分の有給休暇を消滅させることをいいます。

例えば、会社が従業員の有給休暇を、1日あたり1万円として、5日分を計5万円で買い取るようなケースが挙げられます。

有給休暇の買い取りは、原則として違法になります。

ただし、これはあくまで法律で定める有給休暇の日数の範囲内に限られるものであり、法律を上回って与えられた有給休暇について買い取ることは問題ありません

例えば、法律では10日間の有給休暇が与えられるところ、会社が15日間の有給休暇を与えた場合には、法律を上回る5日分の有給休暇について、会社は買い取ることが認められます。

なお、会社が有給休暇を買い取る場合には、それを何円で買い取るかについて法律の定めがないため、会社と従業員との間の話し合いで買い取り額を決定することとなります。

有給休暇の買い取り(買い上げ)は適法?違法?【労働基準法解説】労務管理の実務に携わっていると、「有給休暇を買い取る(買い上げる)ことは適法か、違法か」という質問を受けることがあります。 有給休...

以上

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上西賢佑(京都うえにし社会保険労務士事務所)
京都の社会保険労務士です。このブログでは、会社経営者様や、人事・労務・総務担当者様に向けて、労務管理に役立つ情報を発信しています。お陰様で当ブログの閲覧数は月間最大17万pv・累計170万pvを突破しました。些細な疑問やご質問でも大歓迎です。お問い合わせは、以下の当事務所のホームページからご連絡ください。