働き方改革

新36(サブロク)協定はいつから適用?大企業・中小企業別の経過措置について

働き方改革法を受けて2019年4月1日に労働基準法が改正され、時間外労働の上限規制(1ヵ月の時間外労働の上限は原則として45時間とするなど)が新たに定められるとともに、36協定の様式についても変更がありました。

この改正は、大企業と中小企業とで法律の施行日が異なることに加え、「経過措置」が設けられていることにより、施行日からしばらくは改正後の法律の適用が猶予されるケースがあります。

そこで、今回は、これら法律の施行日と経過措置に関連する情報を整理して解説します。

なお、時間外労働の上限規制の詳しい内容については、以下の記事をご覧ください。

【働き方改革法】時間外労働(残業時間)の上限規制(36協定)働き方改革法(2018年6月29日成立)によって労働基準法が改正され、時間外労働(残業時間)について上限が定められました。 法律の...

大企業・中小企業の定義と施行日

時間外労働の上限規制に関する法改正の施行日は、大企業と中小企業とで異なり、中小企業は大企業に1年遅れて法律が適用されます。

  • 大企業…2019年4月1日
  • 中小企業…2020年4月1日

ここで、中小企業の定義は以下のように定められています。

業種 資本金の額または出資の総額 常時使用する労働者数
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の事業 3億円以下 300人以下

まずは、自社が大企業または中小企業のいずれに該当するかを判断する必要があります。

なお、個人事業主や医療法人など、資本金や出資金の概念がない場合には、労働者数のみで判断することになります。

大企業の経過措置

実務への影響を考慮し、経過措置により、施行日である2019年4月1日からすぐに法律が適用されないケースがあります。

これは、施行日から一斉に法律を適用してしまうと、例えばその直近で締結した36協定までも施行日とともに違法となり、4月1日までに再締結する必要が生じるなど、会社にとって大きな負担が生じます。

そこで、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」により、改正後の法律に基づいて締結される36協定(以下、「新36協定」といいます)の経過措置について、次のとおり定められています。

(時間外及び休日の労働に係る協定に関する経過措置)

附則 第2条

第1条の規定による改正後の労働基準法(以下「新労基法」という。)第36条の規定(新労基法第139条第2項、第140条第2項、第141条第4項及び第142条の規定により読み替えて適用する場合を含む。)は、2019(※)年4月1日以後の期間のみを定めている協定について適用し、同年3月31日を含む期間を定めている協定については、当該協定に定める期間の初日から起算して1年を経過する日までの間については、なお従前の例による。

(※平成表記を西暦表記に変更して記載)

ここでは、改正後の法律は、「2019年4月1日以後の期間のみを定めている協定」について適用することとされています。

36協定は、ある一定の有効期間内において、1日、1ヵ月、1年単位で時間外労働の上限時間数を協定するものです。

そして、このとき、2019年4月1日の期間「のみ」を定めていない36協定は、しばらく法律の適用を猶予することとし、改正前の法律の内容を適用することとされています。

以下の事例をもとに説明します。

事例のように、例えば事業年度が1月から12月であるなどの理由で、2019年1月1日から同年12月31日までを有効期間とする36協定(締結時点では改正前の旧法)を締結しているような場合には、新法の施行日(2019年4月1日)が経過した後も、なお従前(旧法)の36協定をそのまま適用することができます。

そして、次の36協定を締結するタイミングである2020年1月1日以降から新法が適用されることにより、ここから新法に基づく36協定(新様式によるもの)を締結する必要があります。

中小企業の経過措置

中小企業においては、施行日が大企業の1年遅れであることから、経過措置についても、大企業から1年遅らせることとなります。

つまり、中小企業の経過措置についても、前掲の条文中の「2019年」を「2020年」に読み替えるだけ、ということになります。

以下の事例をもとに説明します。

事例によると、中小企業の施行日は2020年4月1日ですが、すでに36協定を締結していることから、2020年12月31日までは新法が適用されず、従前(旧法)の36協定が適用されることとなります。

そして、2021年1月1日から新法が適用される(つまり新様式による36協定を締結する)ことになります。

経過措置の適用がある場合であっても、新法に基づき新様式による36協定を締結することは問題ありません。

まとめ

法改正については、施行日と経過措置とを正しく理解し、しっかりと準備を進めることが重要です。

また、時間外労働の上限規制については、法律の内容がとても細かいため、どのように従業員の時間管理をしていくかを検討しておくことも必要になります。

総じて、経営への影響が大きい法改正であるため、経過措置の有無に関わらず、できる限り早くから対応策を検討しておくことが必要になると考えます。

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上西賢佑(京都うえにし社会保険労務士事務所)
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