働き方改革

【働き方改革法】有給休暇義務化 関連通達を徹底解説

今回は、2019年4月1日に施行される有給休暇の取得義務化に関連する通達をご紹介します。

2018年12月28日付の通達(基発1228第15号)によって、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について」という題目で、働き方改革関連法に関する通達が出されました。

通達とは、法律には定められていない実務的な内容を補うものとして、労働基準監督署から出されるものです。

法律の条文だけでは、実務上どのようにするべきなのか判然としないものもあり、通達はいわば実務的な観点から法律の解釈を明らかにするものといえます。

したがって、法律そのものの内容はもちろん、それに関連する通達まできちんと理解することが、実務を行う上でとても重要になります。

今回は、通達のうち、「第3 年5日以上の年次有給休暇の確実な取得(法第39条第7項及び第8項関係)」の問1から問14までを解説します。

【働き方改革法】有給休暇の取得義務化までに最低知っておきたい5つのポイント働き方改革法(2018年6月29日成立)では、有給休暇について、法律の内容に大きな改正がありました。 有給休暇は、ひとりでも人を雇...

【問1】「使用者による時季指定」を行うタイミング

【問1】使用者による時季指定

【問1】法第39条第7項に規定する使用者による時季指定は、いつ行うのか

【答1】

法第39条第7項に規定する使用者による時季指定は、必ずしも基準日からの1年間の期首に限られず、当該期間の途中に行うことも可能である。

使用者の時季指定とは?

まず、一連の通達を理解する上で重要となる、「使用者による時季指定」について説明します。

2019年4月1日の法改正により新設された、労働基準法第39条第7項では、「使用者は、(中略)有給休暇(中略)の日数のうち5日については、(中略)労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない」と定めています。

つまり、法律によると、法律によって取得が義務付けられる5日分の有給休暇については、会社から従業員に対して、「この日に有給休暇をとるように」ということを指定できるとされています。

これを、「使用者による時季指定」といいます。

使用者が時季指定を行うタイミングは?

法律の条文では、会社はいつの時点で時季指定を行わなければならないのか、判然としません。

そこで、通達により、会社の時季指定はいつ行うものであるかを明らかにしました。

通達によると、時季指定は基準日(有給休暇が与えられる日)の期首(最初の日)に行う必要はなく、期中のいつでも行うことができる、とされています。

この点について、厚生労働省のパンフレットでは、以下のケースを例として挙げています。

  • 基準日から一定期間が経過したタイミング(半年後など)で年次有給休暇の請求・取得日数が5日未満となっている労働者に対して、使用者から時季指定をする
  • 過去の実績を見て年次有給休暇の取得日数が著しく少ない労働者に対しては、労働者が年間を通じて計画的に年次有給休暇を取得できるよう基準日に使用者から時季指定をする

もともと、有給休暇の取得が活発で、従業員が自発的に年5日以上の有給休暇を取得できているのであれば、会社から時季指定をする必要性はありません。

したがって、実務上の運用としては、従業員の有給休暇の取得状況についてしばらく様子を見ながら、もし年に5日の有給休暇をきちんと取得できないような状況であると判断されれば、その時点で会社から時季指定を行う、というような対応が妥当であると思われます。

【問2】時季指定の対象となる労働者の範囲

【問2】使用者による時季指定の対象となる労働者

法第39条第7項に規定する「有給休暇の日数が10労働日以上である労働者」には、同条第3項の比例付与の対象となる労働者であって、前年度繰越分の有給休暇と当年度付与分の有給休暇とを合算して初めて10労働日以上となる者も含まれるのか

【答2】

法第39条第7項の「有給休暇の日数が十労働日以上である労働者」は、基準日に付与される年次有給休暇の日数が10労働日以上である労働者を規定したものであり、同条第3項の比例付与の対象となる労働者であって、今年度の基準日に付与される年次有給休暇の日数が10労働日未満であるものについては、仮に、前年度繰越分の年次有給休暇も合算すれば10労働日以上となったとしても、「有給休暇の日数が十労働日以上である労働者」には含まれない。

「比例付与の対象となる労働者」というのは、いわゆるパート、アルバイトなど、正社員よりも短い日数や時間で働く従業員を意味します。

比例付与の対象になると、働く日数や時間に応じて、与えられる有給休暇の日数が異なるため、場合によっては10日よりも短い日数の有給休暇が与えられることがあります。

有給休暇の取得義務の対象は、条文で、「使用者が与えなければならない有給休暇の日数が10労働日以上である労働者に係るものに限る」(労働基準法第39条第7項)と定められています。

例えば、パートの従業員で、前年度の繰り越し分(有給休暇の残日数)の有給休暇が3日ある状態で、基準日に新たに7日の有給休暇が与えられることとなった場合について説明します。

この従業員は、基準日現在で合計10日の有給休暇を与えられており、この従業員についても、法律の定める「10労働日以上である労働者」に該当し、5日の有給休暇を取得させる義務があるのかどうか、問題になります。

通達では、有給休暇の取得義務の対象になるのは、基準日において「新たに」10日の有給休暇が与えられる従業員であって、たとえ前年度の繰り越し分を合計すると10日を超えることになっても、法律の対象にはならないということを明らかにしました。

したがって、実務上は、前年度から繰り越しされた日数を考慮する必要はなく、あくまで、基準日に新たに与えられる有給休暇の日数が10日以上であるかどうかで、有給休暇の取得義務の有無を判断すればよいといえます。

【問3】半日単位や時間単位による時季指定は認められるか

【問3】半日単位・時間単位による時季指定の可否

法第39条第7項の規定による時季指定を半日単位や時間単位で行うことはできるか

【答3】

則第24条の6第1項の規定により労働者の意見を聴いた際に半日単位の年次有給休暇の取得の希望があった場合においては、使用者が法第39条第7項の年次有給休暇の時季指定を半日単位で行うことは差し支えない。この場合において、半日の年次有給休暇の日数は0.5日として取り扱うこと。

また、法第39条第7項の規定による時季指定を時間単位年休で行うことは認められない

半日単位の時季指定について

通達によると、会社による時季指定を半日単位で行うことは認められるとされています。

そして、この場合に取得した半日単位の有給休暇については、「0.5日分」としてカウントする必要があります。

実務では、例えば所定労働時間が9時から18時(休憩時間は12時から13時)という会社においては、有給休暇を「午前休み(9時から12時まで)」と「午後休み(13時から18時)」というように分けて労務管理をしているケースがあるかと思います。

この場合、午前休みをとった場合には、8時間(1日)に対して3時間の休みになるため、厳密には、0.5日のカウントにはなりません。

しかし、この通達がある以上は、それでも0.5日分の有給休暇を取得したものとして取り扱うことしかできないように解釈されるため、場合によっては従業員にとってやや不利な取り扱いになることもありそうです。

時間単位の時季指定について

次に、時間単位の有給休暇については、会社による時季指定を時間単位で行うことは認められません

したがって、たとえ従業員から時間単位で有給休暇を取得したいとの希望があったとしても、会社から時季指定をすることはできません。

もともと有給休暇は、連続した休暇をとることによって、心身のリフレッシュを図るために創設された制度です。

時間単位の有給休暇は、本来の趣旨からはいわば例外的な位置付けにある制度であるため、今回の法改正では時季指定の対象外とすることになったのだと考えます。

【問4】前年度から繰り越された有給休暇を取得した場合

【問4】前年度から繰り越された年次有給休暇の取扱い

前年度からの繰越分の年次有給休暇を取得した場合は、その日数分を法第39条第7項の規定により使用者が時季指定すべき5日の年次有給休暇から控除することができるか。

【答4】

前年度からの繰越分の年次有給休暇を取得した場合は、その日数分を法第39条第7項の規定により使用者が時季指定すべき5日の年次有給休暇から控除することとなる。

なお、法第39条第7項及び第8項は、労働者が実際に取得した年次有給休暇が、前年度からの繰越分の年次有給休暇であるか当年度の基準日に付与された年次有給休暇であるかについては問わないものである。

有給休暇の時効は、2年です。

したがって、入社後1年6ヵ月以上経過した従業員については、前年度からの繰越分の日数(①)と、基準日に新たに与えられる有給休暇の日数(②)とを合計した日数(①+②)の有給休暇が権利として与えられます。

そして、②の有給休暇の日数が10日以上である場合に、そのうち5日の有給休暇を取得することが法律により義務付けられます。

そこで、従業員が前年度からの繰越分(①)の有給休暇を取得した場合に、それを5日の有給休暇の日数から控除することができるかどうかが問題になります。

この点について、通達により、5日の有給休暇を取得すれば、それが前年度からの繰越分なのか、それとも当年度の基準日に与えられた有給休暇であるのかについては問わないこととされました。

【問5】指定した時季を、事後的に変更することの可否

【問5】事後における時季変更の可否

労働基準法第39条第7項の規定により指定した時季を、使用者又は労働者が事後に変更することはできるか

【答5】

法第39条第7項の規定により指定した時季について、使用者が則第24条の6に基づく意見聴取の手続を再度行い、その意見を尊重することによって変更することは可能である。

また、使用者が指定した時季について、労働者が変更することはできないが、使用者が指定した後に労働者に変更の希望があれば、使用者は再度意見を聴取し、その意見を尊重することが望ましい。

会社(使用者)からの変更

会社が一度指定した有給休暇の取得時季について、何らかの事情(例えば営業上の理由など)が生じたことによって、事後にそれを変更することはできるのでしょうか。

通達では、会社(使用者)側から変更することはできる、としています。

ただし、この場合には、会社はあらためて従業員の意見を聴く手続が必要になり、また、その意見を尊重しなければならない点について留意が必要です(一方的に変えることはできません)。

従業員(労働者)側からの変更

一方で、会社から時季指定された有給休暇の取得日について、従業員(労働者)側から変更することはできないとされています。

ただし、会社は、あらためて従業員から意見を聴き、それを尊重することが望ましいとされています。

あくまで「望ましい」とされているため、法律上の義務ではなく、従業員による事後的な変更を認めるのかどうかについては、会社ごとの判断によります。

従業員からの事後的な変更を認めるかどうかの取り扱いについては、会社ごとの判断に委ねられるため、できれば就業規則などに明記しておくことが望まれます。

【問6】1年間の途中に育児休業などの期間が含まれる場合

【問6】義務の履行が不可能な場合

基準日から1年間の期間(以下「付与期間」という。)の途中に育児休業が終了した労働者等についても、5日の年次有給休暇を確実に取得させなければならないか。

【答6】

基準日から1年間の期間(以下「付与期間」という。)の途中に育児休業が終了した労働者等についても、5日の年次有給休暇を確実に取得させなければならないか。

【答6】付与期間の途中に育児休業から復帰した労働者等についても、法第39条第7項の規定により5日間の年次有給休暇を取得させなければならない

ただし、残りの期間における労働日が、使用者が時季指定すべき年次有給休暇の残日数より少なく、5日の年次有給休暇を取得させることが不可能な場合には、その限りではない

有給休暇の権利は、育児休業期間中であっても、同じように発生します。

そして、基準日から1年の間に、育児休業期間が終了して仕事に復帰した場合、やはり法律が適用され、当該1年が満了するまでに5日の有給休暇を取らせる必要があるのかどうかが問題になります。

通達では、このような場合であっても同様に、原則として5日の有給休暇の取得義務があるとしています。

例えば、有給休暇の付与日(基準日)が4月1日の場合で、翌年の3月1日に育児休業から仕事に復帰した場合、3月1日から3月末までの1ヵ月の間に、5日の有給休暇を取得する必要があります。

ただし、例えば、育児休業から仕事に復帰したのが3月30日であるような場合など、もはや5日の有給休暇を取る余地がない場合には、例外的に法律の適用はないとされています。

【問7】年5日を超えて時季指定をすることの可否

【問7】年5日を超える時季指定の可否

使用者は、5日を超える日数について法第39条第7項による時季指定を行うことができるか。

【答7】

労働者の個人的事由による取得のために労働者の指定した時季に与えられるものとして一定の日数を留保する観点から、法第39条第7項の規定による時季指定として5日を超える日数を指定することはできない

また、使用者が時季指定を行うよりも前に、労働者自ら請求し、又は計画的付与により具体的な年次有給休暇日が特定されている場合には、当該特定されている日数について使用者が時季指定することはできない。

この通達では、会社が行う時季指定は、5日を超えることができないこととされています。

もともと、有給休暇は従業員の求めにより自由に取得するのが大原則であり、会社が時季指定できる有給休暇の範囲は、限定的に解されるべき、というのが通達の趣旨であると考えます。

また、従業員からすでに有給休暇を取得すると申し出ている日がある場合には、その日については会社から時季指定をすることはできません(そもそも時季指定をする必要がない、といえます)。

【問8】時季指定後に従業員自ら有給休暇を取得した場合

【問8】時季指定後に従業員自ら有給休暇を取得した場合

法第39条第7項の規定によりあらかじめ使用者が時季指定した年次有給休暇日が到来するより前に、労働者が自ら年次有給休暇を取得した場合は、当初使用者が時季指定した日に労働者が年次有給休暇を取得しなくても、法第39条第7項違反とはならないか。

【答8】

設問の場合は労働者が自ら年次有給休暇を5日取得しており、法第39 条第7項違反とはならない。なお、この場合において、当初使用者が行った時季指定は、使用者と労働者との間において特段の取決めがない限り、当然に無効とはならない。

会社が時季指定をした後に、従業員が自ら有給休暇を取得した場合には、その取得した有給休暇の日数分だけ、もともと時季指定していた日に有給休暇を取得しなくても、法律違反にはならない、ということを明らかにしています。

ただし、この場合でも、もともと会社が指定していた有給休暇の取得日については、当然に無効になるものではないとされています。

つまり、会社が時季指定していた日については、そのまま有給休暇を取得させることが、法律の趣旨(有給休暇の取得促進)から望ましいということだと考えます。

【問9】端数処理の方法

【問9】端数の取扱い

則第24条の5第2項においては、基準日又は第一基準日を始期として、第二基準日から1年を経過する日を終期とする期間の月数を12で除した数に5を乗じた日数について時季指定する旨が規定されているが、この「月数」に端数が生じた場合の取扱い如何。また、同規定により算定した日数に1日未満の端数が生じた場合の取扱い如何。

【答9】

則第24条の5第2項を適用するに当たっての端数については原則として下記のとおり取り扱うこととするが、この方法によらず、月数について1箇月未満の端数をすべて1箇月に切り上げ、かつ、使用者が時季指定すべき日数について1日未満の端数をすべて1日に切り上げることでも差し支えない。

【端数処理の方法】

①基準日から翌月の応答日の前日までを1箇月と考え、月数及び端数となる日数を算出する。ただし、基準日の翌月に応答日がない場合は、翌月の末日をもって1箇月とする。

②当該端数となる日数を、最終月の暦日数で除し、上記①で算出した月数を加える。

③上記②で算出した月数を12で除した数に5を乗じた日数について時季指定する。なお、当該日数に1日未満の端数が生じている場合は、これを1日に切り上げる。

 

(例)第一基準日が10月22日、第二基準日が翌年4月1日の場合

①10月22日から11月21日までを1箇月とすると、翌々年3月31日までの月数及び端数は17箇月と10日(翌々年3月22日から3月31日まで)と算出される。

②上記①の端数10日について、最終月(翌々年3月22日から4月21日まで)の暦日数31日で除し、17箇月を加えると、17.32…箇月となる。

③17.32…箇月を12で除し、5を乗じると、時季指定すべき年次有給休暇の日数は、7.21…日となり、労働者に意見聴取した結果、半日単位の取得を希望した場合には7.5日、希望しない場合には8日について時季指定を行う。

法定の基準日とは別に、会社が独自の基準日を設けている場合には、本来の(法律上の)有給休暇の付与日と、会社における有給休暇の付与日が異なることによって、取得義務の生じる日数をどのように判断するかが問題になります。

まずは、基本的なケース(月初が法定の基準日となるケース)について、理解する必要があります。

要は、図のように「重複期間」が生じる場合、何日の有給休暇を取得させる義務が生じるのかが不明になるため、そのような場合の計算方法を定めているものです。

詳細は、以下をご覧ください。

もっと深く!有給休暇の取得義務化の実務(実務家向け)働き方改革法(2018年6月29日成立)により、2019年4月1日から、年に5日間の有給休暇を取得することが義務になります。 今回...

通達では、さらに、入社日が月の途中である場合に、どのように端数処理をしていくべきかを定めています。

計算の結果、日数に端数が生じた場合には、切り上げることとします。

0.5日未満の端数が生じた場合には、半日単位の有給休暇を会社が認めているのであれば、0.5日に切り上げることとし、認めていないのであれば1日に切り上げます。

【問10】従業員の意見聴取の方法

【問10】意見聴取の具体的な内容

則第24条の6の意見聴取やその尊重の具体的な内容如何。

【答10】

則第24条の6第1項の意見聴取の内容としては、法第39条第7項の基準日から1年を経過する日までの間の適時に、労働者から年次有給休暇の取得を希望する時季を申告させることが考えられる。

また、則第24条の6第2項の尊重の内容としては、できる限り労働者の希望に沿った時季を指定するよう努めることが求められるものである。

「則」とは、「労働基準法の施行規則」を意味します。

以下、条文をご紹介します。

労働基準法の施行規則 第24条の6

使用者は、法第39条第7項の規定により労働者に有給休暇を時季を定めることにより与えるに当たっては、あらかじめ、同項の規定により当該有給休暇を与えることを当該労働者に明らかにした上で、その時季について当該労働者の意見を聴かなければならない

2 使用者は、前項の規定により聴取した意見を尊重するよう努めなければならない

会社は、従業員に有給休暇の時季を指定する際には、従業員の意見を聴いたうえで時季を指定しなければなりません。

そして、通達によると、「意見聴取」とは、従業員から「年次有給休暇の取得を希望する時季を申告させる」こと、簡単にいいますと、「会社は従業員に、いつ有給休暇をとりたいのか希望を聴いてから、時季指定をしなさい」ということを意味します。

実務的には、従業員に有給休暇の希望日を申告してもらうための申告書などを作成し、基準日から1年間の中で希望日をヒアリングするなどの手続をしておけば十分ではないかと考えます。

さらに、「尊重するよう努める」とは、できる限り従業員の希望どおりに有給休暇を取得させられるように、会社として努力する必要があることを意味します。

逆に、事業活動に支障が生じるような場合にまで、無理に従業員の希望を聴く必要はないとも解釈することができそうです(個人的には、時季指定については、やや会社側が優位にあるイメージをもっています)。

【問11】従業員が半日単位や時間単位の有給休暇を取得した場合

【問11】労働者自ら取得した半日年休・時間単位年休の取扱い

労働者自らが半日単位又は時間単位で取得した年次有給休暇の日数分については、法第39条第8項が適用されるか。

【答11】

労働者が半日単位で年次有給休暇を取得した日数分については、0.5日として法第39条第8項の「日数」に含まれ、当該日数分について使用者は時季指定を要しない。なお、労働者が時間単位で年次有給休暇を取得した日数分については、法第39条第8項の「日数」には含まれない。

有給休暇の取得義務については、会社から時季指定をするのか、それとも従業員から自発的に有給休暇を取得するのかについては特に意識することなく、結果として5日の有給休暇をきちんと取得できれば、問題ありません。

したがって、そもそも有給休暇の取得が5日を満たしている会社では、会社による時季指定を行う必要はなく、従業員が自発的に半日単位の有給休暇を取得した場合には、通達【問3】に従い、その日数を5日に含めることについては問題ありません。

一方で、時間単位の有給休暇については、通達【問3】のとおり、そもそも有給休暇の取得義務のある5日にカウントすることはできませんので、いくら従業員がこれを取得しようとも、これを5日に含めることはできません。

【問12】特別休暇を5日の有給休暇に含めることの可否

【問12】事業場が独自に設けている特別休暇の取扱い

事業場が独自に設けている法定の年次有給休暇と異なる特別休暇を労働者が取得した日数分については、法第39条第8項が適用されるか。

【答12】

法定の年次有給休暇とは別に設けられた特別休暇(たとえば、法第115 条の時効が経過した後においても、取得の事由及び時季を限定せず、法定の年次有給休暇を引き続き取得可能としている場合のように、法定の年次有給休暇日数を上乗せするものとして付与されるものを除く。以下同じ。)を取得した日数分については、法第39条第8項の「日数」には含まれない

なお、法定の年次有給休暇とは別に設けられた特別休暇について、今回の改正を契機に廃止し、年次有給休暇に振り替えることは法改正の趣旨に沿わないものであるとともに、労働者と合意をすることなく就業規則を変更することにより特別休暇を年次有給休暇に振り替えた後の要件・効果が労働者にとって不利益と認められる場合は、就業規則の不利益変更法理に照らして合理的なものである必要がある。

この通達における「特別休暇」とは、会社によって独自に設けている休暇をいい、例えば、慶弔休暇などを意味すると考えます。

通達では、この特別休暇を取得したことをもって、法律で定められた有給休暇の取得義務を満たすことはできない(5日にカウントすることはできない)ことが定められています。

特別休暇は、法律で定められているものではなく、あくまで会社が独自に設けているものです。

したがって、この特別休暇を取得したことをもって、法定の有給休暇の取得義務を満たすこととする、というのは理屈上も無理があると考えます。

ただし、「法定の年次有給休暇日数を上乗せするものとして付与されるものを除く」と定められている点については、例えば、法律で定める有給休暇の日数に上乗せした有給休暇を与えている場合(勤続6ヵ月で、15日の有給休暇を与える場合など)には、当該上乗せされた有給休暇を取得したことをもって、取得義務を果たしたことと認められます。

【問13】有給休暇管理簿の内容

【問13】年次有給休暇管理簿の作成

年次有給休暇管理簿に記載すべき「日数」とは何を記載すべきか。また、電子機器を用いて磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク等により年次有給休暇管理簿を調整することはできるか。

【答13】

年次有給休暇管理簿に記載すべき「日数」としては、労働者が自ら請求し取得したもの、使用者が時季を指定し取得したもの又は計画的付与により取得したものにかかわらず、実際に労働者が年次有給休暇を取得した日数(半日単位で取得した回数及び時間単位で取得した時間数を含む。)を記載する必要がある。

また、労働者名簿、賃金台帳と同様の要件を満たした上で、電子機器を用いて磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク等により調整することは差し支えない。

労働基準法施行規則により、以下のように「年次有給休暇管理簿」の作成が義務付けられることとなりました。

労働基準法施行規則 第24条の7

使用者は、法第39条第5項から第7項までの規定により有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日(第一基準日及び第二基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類(第55条の2において「年次有給休暇管理簿」という。)を作成し、当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後三年間保存しなければならない。

通達により、会社が年次有給休暇管理簿に記載するべきとされている「日数」とは、従業員が実際に取得した有給休暇の日数であることが明らかになりました。

また、年次有給休暇管理簿は必ずしも書面(紙)で作成する必要はなく、エクセルシートや勤怠システムなどパソコンを用いて作成することもできるとされています。

【問14】就業規則への記載の必要性

【問14】就業規則への記載

法第39条第7項の規定による時季指定について、就業規則に記載する必要はあるか。

【答14】

休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項であるため、使用者が法第 39条第7項による時季指定を実施する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について、就業規則に記載する必要がある

通達によると、会社が時季指定をする場合には、「時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法」などについて、就業規則に定めることが必要とされています。

逆にいうと、会社がまったく時季指定をすることなく、従業員の希望に従って5日の有給休暇を取得させている場合には、就業規則に記載する必要はありません。

例えば、労使協定に基づき、全従業員について、5日の有給休暇を計画的に付与している場合には、基本的に会社の時季指定をする場面はありませんので、このような場合には、就業規則に時季指定について記載する必要はありません。
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上西賢佑(京都うえにし社会保険労務士事務所)
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