労働基準法

1ヶ月単位の変形労働時間制とは?制度の内容や手続きをわかりやすく解説

「変形労働時間制」とは?

法定労働時間とは?

労働基準法では労働時間について、1日または1週間の労働時間の上限として、いわゆる「法定労働時間」を定めています。

法定労働時間は、次のとおりです。

【法定労働時間】

  1. 1日あたり「8時間」(休憩時間を除く)
  2. 1週間あたり「40時間」(休憩時間を除く)※例外あり

そして、会社は法定労働時間を超える時間を所定労働時間として定めることは認められません。

従業員を労働基準法よりも不利な条件で働かせることは認められないためです。

したがって、例えば、所定労働時間を1日10時間と定めること、あるいは1週間48時間などと定めることは、法律上は認められません。

この場合、所定労働時間はあくまで「8時間」として取り扱われることとなり、プラス2時間分の労働については、残業時間(法定時間外労働)として取り扱う必要があります。

これは、法定労働時間を超える時間である2時間分について残業代(割増賃金)の支払が必要になるということを意味します。

変形労働時間制とは?

法定労働時間に関わらず、現実には、月単位でみると特に後半が忙しい、または、ある特定の週や日だけが忙しいなど、会社ごと・部署ごと・業務ごとなどの傾向がみられる場合があります。

このような場合には、毎日一定の労働時間とするよりも、むしろ業務の繁閑に応じた労働時間を個別に定める方が、従業員にとって、より柔軟で効率的に働くことができるといえます。

このような実情を踏まえ、「変形労働時間制」は、業務の繁閑などの事情に応じて、法定労働時間を弾力的に変形させることによって、効率的な働き方を目指し、最終的には労働時間の短縮を図ることを目指して設けられました。

そして、「一ヶ月単位の変形労働時間制」とは、1ヶ月以内の一定の期間を平均して、1週間あたりの労働時間が法定労働時間を超えないように所定労働時間を定めることをいいます。

これにより、あらかじめ所定労働時間を定めておいた日または週においては、法定労働時間を超えて従業員を働かせることができるようになります。

言い換えると、1ヶ月ごとに、労働時間の総枠の範囲内に収まるように従業員の出勤日数と労働時間を調整することを意味します。

つまり、変形労働時間制を採用することにより、法定労働時間を超えた所定労働時間を定めることが可能になります。

その結果、会社としては不要な残業代(割増賃金)のコストを削減でき、従業員にとっても効率のよい働き方ができるようになります。

変形労働時間制の種類

労働基準法では、変形労働時間制について、次の4種類が定められています。

【変形労働時間制の種類】

  1. 1ヶ月単位の変形労働時間制
  2. 1年単位の変形労働時間制
  3. フレックスタイム制
  4. 1週間単位の非定型的変形労働時間制

①と②の違いは、どの期間で帳尻を合わせるか、という点です。

例えば、毎年7月と12月が忙しい会社において、その月の労働時間は長くなるものの、それ以外の月の労働時間を減らすことで、法定労働時間との帳尻を合わせることができる場合であれば、一年単位の変形労働時間制を採用することが適切といえます。

1ヶ月単位の変形労働時間制を採用する場合の手続

手続の内容

会社が1ヶ月単位の変形労働時間制を採用する場合には、次の①または②のいずれかの手続が必要になります。

【1ヶ月単位の変形労働時間制を採用する場合】

  1. 就業規則に定める
  2. 労使協定を締結する

いずれの方法を採用するかは、会社が決めることができます。

ただし、②の労使協定を締結した場合には、その労使協定を管轄の労働基準監督署に届け出る必要がありますので留意してください。

就業規則または労使協定で定める内容

就業規則または労使協定で定める内容は、次のとおりです。

【就業規則または労使協定で定める内容】

  1. 対象者
  2. 変形期間
  3. 変形期間を平均して、1週間の法定労働時間を超えない定め
  4. 変形期間における各日・各週の労働時間
  5. 有効期間
  6. 変形期間の起算日

①対象者

どの従業員を変形労働時間制の適用対象とするかを定めます。

例えば、部署ごとに適用の有無を変えることも可能です。

②変形期間

変形期間は、1ヶ月以内の一定の期間を定める必要があります。

実務上は変形期間を1ヶ月の歴月にすることが一般的ですが、法律上は、一ヶ月「以内」とあるとおり、必ずしも1ヶ月ちょうどに設定する必要はありません。

例えば、10日や2週間などの期間を変形期間の単位とすることも認められます。

③変形期間を平均して、1週間の法定労働時間を超えない定め

1ヶ月単位の変形労働時間制は、1週間の法定労働時間を変形させることにより、1ヶ月単位でみて法定労働時間の帳尻を合わせる制度です。

ここで「変形させる」とは、1週間の法定労働時間を1ヶ月単位に置き換えることにより、「1ヶ月単位の総枠の法定労働時間」を設定することをいいます。

1ヶ月単位の総枠の法定労働時間を求める際の計算式は、次のとおりです。

【法定労働時間の総枠の計算式】

1週間の法定労働時間 ÷ 7日 × 変形期間の歴日数

この計算式によって計算すると、変形期間を1ヶ月とする場合の、当該1ヶ月の労働時間の総枠は、次の表のようになります(小数点第2位以下を切捨)。

1ヶ月の歴日数 労働時間の総枠
31日 177.1時間
30日 171.4時間
29日 165.7時間
28日 160.0時間

計算する際に用いる「1週間の法定労働時間」とは、原則として1週あたり40時間となります。

ただし、労働基準法によって労働時間の特例が認められる事業については、1週あたりの法定労働時間は44時間になります。

労働時間の特例が認められる事業とは、例えば次の事業をいいます。

【労働時間の特例(1週44時間)】

常時10人未満の従業員を使用する次の事業

  1. 商業・理容業
  2. 映画・演劇業(映画製作業を除く)
  3. 保健衛生業
  4. 接客娯楽業(旅館・飲食店など)

④変形期間における各日・各週の労働時間

変形期間中の各日、各週の労働時間をあらかじめ定めておく必要があります。

労働基準監督署の通達では、会社が業務の都合によって、任意に(随時)労働時間を変更するような制度は、変形労働時間制として認められないこととしています(平成11年3月31日基発168号)。

各日の労働時間は、単に「労働時間は1日8時間とする」などでは足りず、始業・終業時刻などについて具体的に定める必要があります。

例えば、就業規則の記載例は次のようになります。

【就業規則の記載例(各日・各週の労働時間)】

(勤務時間)

第〇条 所定労働時間は、毎月1日を起算日とする1ヶ月単位の変形労働時間制とし、1ヶ月を平均して1週40時間以内とする。

2 所定労働時間、始業・終業の時刻、休憩時間は次のとおりとする。

一、毎月1日から24日まで

所定労働時間1日7時間(始業午前9時・終業午後5時・休憩正午から午後1時まで)

二、毎月25日から月末まで

所定労働時間1日9時間(始業午前8時・終業午後6時・休憩正午から午後1時まで)

⑤有効期間

労使協定による場合には、その協定の有効期間を定めます。

⑥変形期間の起算日

変形期間の起算日を定めます。

歴月単位であれば月初(1日)を起算日とすると分かりやすいでしょう。

また、給与計算の便宜を図る観点からは、変形期間の起算日は給与の締め日の翌日に設定すると分かりやすいでしょう。

1ヶ月単位の変形労働時間制と時間外労働(残業時間)の取扱い

原則として、法定労働時間を超えて働いた場合には、時間外労働(残業)となり、割増賃金(残業代)の支払が必要となります。

しかし、変形労働時間制は、この法定労働時間を変形させていることから、法定時間外労働の取扱いが異なることに注意が必要です。

1日の法定時間外労働

①1日の所定労働時間が8時間以内である場合

8時間を超えた時間について、法定時間外労働となります。

例えば、1日の所定労働時間を6時間と定めている場合には、8時間を超えた分について割増賃金を支払うこととなります。

②1日の所定労働時間が8時間超である場合

あらかじめ定めた所定労働時間を超えた時間について、法定時間外労働となります。

例えば、1日の所定労働時間を9時間と定めている場合には、9時間を超えた分について割増賃金を支払うこととなります。

1週の法定時間外労働

①1週の所定労働時間が40時間以内である場合

40時間を超えた時間について、法定時間外労働となります。

②1週の所定労働時間が40時間超である場合

あらかじめ定めた所定労働時間を超えた時間について、法定時間外労働となります。

変形期間の法定時間外労働

法定労働時間の総枠を超えて労働した時間について、法定時間外労働となります。

ただし、上記の1日または1週単位で法定労働時間としてすでにカウントされた時間を除きます。

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