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育児をする従業員の残業制限(所定外労働の免除・時間外労働の制限)の制度について解説【育児・介護休業法】

はじめに

育児をする従業員については、育児・介護休業法によって、育児休業をはじめとする様々な制度が設けられています。

このうち、育児をする従業員の残業時間を制限する制度として、育児・介護休業法では、「所定外労働の免除」と、「時間外労働の制限」という2つの制度を設けています

この2つの制度は、同じく「残業時間の制限」を目的とした制度であり、制度内容も似ていることから、正しく活用できていないこともあります。

そこで今回は、残業の制限に関する2つの制度の内容について、正しく理解をしていただくために、わかりやすく解説をします。

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所定外労働の免除(残業の免除)とは?

「所定外労働の免除(残業の免除)」とは?

会社は、3歳未満の子を養育している従業員から請求があった場合には、原則として、所定労働時間を超えて働かせることはできません(育児・介護休業法第16条の8第1項)。

この制度を一言でいうと、「育児のために残業を免除する制度」といえます。

「免除」という言葉は、残業を一切(1分でも)行う必要がないことを意味します。

また、この制度は、従業員から請求があった場合に、会社に残業をさせてはならない義務が生じるもので、従業員から請求がない場合には残業を命じても問題ありません。

「所定労働時間」とは、会社が就業規則などで定めている始業・終業時刻(いわゆる定時)をいい、「所定外労働」とは、所定労働時間を1分でも超えて働くことをいいます。

例えば、始業時刻が9時・終業時刻が17時の会社であれば、17時以降の残業が免除の対象となります(なお、正確には、9時よりも前に行った業務や、休憩時間中に行った業も所定外労働となります)。

男性(夫)による請求はできるか?

この制度は、要件に該当すれば、男性(夫)でも利用することができます

細かい話になりますが、管理職であって、法律上の「管理監督者(労働基準法第 41 条第2号)」に該当する従業員については、労働時間に関する規定の適用が除外されていることから、この制度の対象外となります。

パート・アルバイト、契約社員による請求

パート・アルバイトで働く従業員や、期間を定めて雇用される有期契約の従業員(契約社員)であっても、原則として、この制度を利用することができます(ただし、下記の「例外②」に留意してください)。

例外①(対象とならないケース)

法律では、従業員の残業を免除することによって、事業の正常な運営を妨げる場合には、従業員から請求があった場合でも、会社はこれを認める必要がないとされています。

どのような場合に、「事業の正常な運営を妨げる」と判断されるのかについては、具体的な基準はありません。

基本的な考え方として、その従業員の担当する作業の内容、作業の忙しさ、替わりの人員の配置の難易度など、様々な事情を考慮しながら判断する必要があります。

例外②(対象とならないケース)

会社が労使協定を締結している場合には、次の従業員について、制度の対象から除くことが認められます。

労使協定とは、会社と従業員の代表者との間で、労務管理に関する取り決め(協定書の締結)をする労務管理上の手続をいいます。

【労使協定によって制度の対象外になる従業員】

  1. 入社後1年未満の従業員(新入社員など)
  2. 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員(パート・アルバイトなど)

所定外労働の免除(残業の免除)の申請方法・期間など(手続面)

利用回数・申請方法

この制度は、子が3歳未満の間であれば、何回でも利用することができます

従業員からの請求は、1回の利用につき、「1ヵ月以上1年以内の期間」について、開始日と終了日を明らかにして、開始予定日の1ヵ月前までに行う必要があります(育児・介護休業法第16条の8第2項)。

一般的には、会社の社内規定に基づき、申請書(会社が認める場合には、メールなどでも可)を提出することによって行います。

請求の際の通知事項

請求をする従業員は、次の内容を会社に通知することとされています(育児・介護休業法施行規則第45条)。

【請求時の通知事項】

  1. 請求の年月日
  2. 請求をする従業員の氏名
  3. 請求にかかる子の氏名、生年月日および請求する従業員との続柄など
  4. 請求にかかる制限期間の開始日および終了日
  5. 請求にかかる子が養子の場合は、養子縁組の効力が生じた日

制度利用の終了事由

制度の利用は、次の事由が生じた場合に自動的に終了します。

  • 育児の必要がなくなった場合(子どもが満3歳に達したなど)
  • 別に産前産後休業や、育児休業が始まった場合

時間外労働の制限(残業の制限)とは?

「時間外労働の制限」とは?

前述の「所定外労働の免除」と似た制度として、「時間外労働の制限」という制度があります。

この2つの制度は、育児をする従業員の残業の制限に関する制度という点で似ているため、違いが分かりにくいものです。

会社は、小学校に入学するまでの子を養育している従業員から請求があった場合には、原則として、1ヵ月について24時間1年間について150時間を超える時間外労働をさせることはできません(育児・介護休業法第17条第1項)。

「所定外労働の免除」と「時間外労働の制限」の違い

前述の「所定外労働の免除」制度の解説において、「所定外労働」とは、始業・終業時刻(定時)以外の時間に働くことであることを説明しました。

「免除」という言葉のとおり、請求が認められた場合には、一切(たとえ1分でも)働く必要はありません。

一方、「時間外労働の制限」制度について、「時間外労働」とは、法定労働時間を超えて働くことをいいます。

法定労働時間は、法律によって、原則として1日8時間・1週40時間とされており、法定労働時間を超えて働く場合には、会社は通常の賃金の25%以上の割増賃金(いわゆる残業代)を支払う義務が生じます(労働基準法第32条、37条)。

例えば、所定労働時間(定時)が9時から17時(途中休憩1時間)の会社では、1日の実働時間は7時間であるため、17時を超えた時点では、法定労働時間(8時間)に達しておらず、時間外労働にはなりません(所定外労働になる)。

時間外労働になるのは、労働時間が8時間に達する18時以降です。

なお、このとき17時から18時までの時間を「法内残業」、18時以降の残業を「法外残業」として、残業を分類することがあります。

つまり、育児・介護休業法は、時間外労働の制限として、法定労働時間を超える労働(法外残業)に対する制限について、1ヵ月および1年単位の時間制限を設けているということです。

【所定外労働と時間外労働の違い】

所定外労働(法内残業) 時間外労働(法外残業)
定義 会社の所定労働時間(始業・終業時刻)を超えて働く時間 法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えて働く時間
割増賃金(25%以上) 不要 必要
労使協定(36協定) 不要 必要

労使協定(36協定)との関係

会社が従業員に時間外労働を指示するためには、労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります(労働基準法第36条)。

このとき、労使協定には時間外労働の上限時間を定めますが、労使協定において定めた上限時間が、1ヵ月について24時間、1年について 150時間を下回る場合は、その労使協定で定めた時間外労働の上限時間が優先されることとなります。

例外

事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は従業員の請求を拒むことができます。

また、労使協定を締結している場合には、入社後1年未満などの従業員からの請求を拒むことができる点については、「所定外労働の免除」と同様です。

手続

請求手続についても、「所定外労働の免除」と同様です。

この制度は、子が小学校に入学するまでであれば、何回でも利用することができます

従業員からの請求は、1回の利用につき、「1ヵ月以上1年以内の期間」について、開始日と終了日を明らかにして、開始予定日の1ヵ月前までに行う必要があります(育児・介護休業法第17条第2項)。

このとき、従業員が1年未満の期間で請求した場合には、その請求期間内において150時間を超えないようにしなければなりません。

細かい話になりますが、時間外労働の制限の請求期間においては、1ヵ月24時間と1年150時間の両方の制限がかかります。

ただし、請求期間が6ヵ月以下の場合には、実質的に1年150時間の時間制限の意味がなくなります(6ヵ月×24時間=144時間<150時間)ので、この場合1ヵ月24時間の制限のみがかかります。

例えば、請求期間が5ヵ月の場合には、各月それぞれの時間外労働は24時間ずつまでとなり、これにより、期間中の合計時間も、24時間×5ヵ月=120時間までに制限されます。

その他(罰則など)

両制度の併用

所定外労働の免除の制度と、時間外労働の制限の制度を同時に請求すること(両制度を併用すること)は、矛盾が生じるため認められません(育児・介護休業法第17条第2項)。

特殊な労働時間管理をしている場合

労働基準法に定められている特殊な労働時間管理として、変形労働時間制(1ヵ月または1年単位)、裁量労働制、フレックスタイム制、事業場外のみなし労働時間制などを導入している会社においても、所定外労働の免除・時間外労働の制限制度の対象となります(厚生労働省「改正育児・介護休業法に関するQ&A(平成22年2月26日版)」)。

罰則

従業員が請求したにも関わらず、会社が正当な理由なくこれを拒否する場合には、労働局による勧告の対象となり、会社が勧告に従わない場合には、会社名の公表制度があります(社会的な制裁)。

また、報告を求められた際に虚偽の報告をした会社に対して、過料制度があります。

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